安倍首相本人を初め現在の政権に大きな影響力を持政治家たちと、強い結びつきを持っているとされる日本会議について知りたく読んでみた。Wikiによると、特別顧問の肩書の安倍首相、麻生財務大臣を初め、平沼、石破、菅、下村、高市、甘利、岸田、稲田・・・とそうそうたるメンバーが、日本会議国会議員懇談会という「日本会議を支援する超党派の議員によって構成される議員連盟」(Wiki)に所属して活動している。
日本会議そのものは、「美しい日本の再建と誇りある国づくりのために政策提言と国民運動を推進する民間団体である」(同団体ホームページ)。歴史と伝統に基づいた新憲法制定、自虐歴史教育の是正、総理大臣の靖国神社公式参拝の実現など、いわゆる「伝統的」価値観を持つ団体だ。以前、英エコノミスト誌が「ナショナリスト」団体としているのを読んだことがある。
日本会議については、Webにいろいろな情報がアップされているので、そちらを見ていただければと思うが、本書はその日本会議について、その起源・歴史、主張、活動、中心・周縁となる人々を、丹念な取材により描き出した佳作だ。過去の1次資料にも根気強く当たっている。そのおかげで、日本会議自体は巨大な政治団体などではなく草の根の市民活動に基づいた組織であることや、伊藤哲夫、百地章、高橋史朗(敬称略)ら運動推進者の考えや、影の実力者であったとされる安東巖の影響力などを知ることができた。
本書の愁眉は、巻末の「むすびにかえて」にある筆者からの警告である。反民主的ともとれる主張を持つ日本会議は、草の根の極めて地道で継続的な「民主的な市民運動」によりその政策提言を実現してきた。「このままいけば、『民主的な市民運動』は日本の民主主義を殺すだろう」(p298)。まさに、麻生さんが言うように「ナチスの手法」が着々と積み重ねられているのだ。
【目次】
第1章 日本会議とは何か
第2章 歴史
第3章 憲法
第4章 草の根
第5章 「一群の人々」
第6章 淵源