その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

デュトア月間の始まり~始まり~: N響 12月定期Bプロ/ 指揮:シャルル・デュトワ/ベートーヴェン交響曲 第5番ほか

2016-12-04 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 ここ数年12月のN響定期はデュトアさんの定位置。毎年、素晴らしい演奏を聴かせてくれるので、今年は頑張って一回券の争奪戦に参加し、何とかB定期のチケットをゲット。私にとっては、A,B,C揃い踏みの豪華な12月となりました。

 この日はプログラムが出色。前半2曲は物語がついた音楽という共通点はありますが、ロシアのプロコフィエフとフランスのラヴェルの曲。そして後半はベートーヴェン、それも交響曲第5番。これがデュトアのプログラムと聞けば、何か深慮深謀があるに違いないと思いますが、デュトアでなければ精神分裂症プログラムと取られても仕方がないような曲編成。蓋を開けてみると、やはりデュトアらしい多様性が活かされた、実に多彩でエキサイティングなものでした。

 前半はラヴェルの「マ・メール・ロワ」が特に秀逸でした。音がひたすら美しく輝いています。弦の美しさもさることながら、フルート、クラリネット、オーボエ、イングリッシュホルンなど木管のソロが絶妙。終曲の「妖精の園」はヴァイオリンとヴィオラの独奏など、天に昇るような気分。このままこの日の演奏会が終わっても何の文句も無いと感じた程です。むしろ、この心地よさを後半の「運命」で壊されてほしくないと思ったぐらい。このバレエを是非見てみたいです。

 休憩後の交響曲第5番は直球ど真ん中のストロングスタイル。太筆による楷書体文字のような堂々たる演奏でした。第1楽章、第2楽章は予想以上の正統派ぶりに驚くとともに、ちょっと教科書的すぎやしないかと拍子抜け感があったのですが、第3楽章以降は押し寄せる大波のような怒涛の演奏に完全に飲み込まれました。この日は特にコントラバスの響きが太く、厚かったのが印象的でした。サントリーホールの音響の中で聴く「運命」は格別です。

 さあ、次はAプロで「カルメン」。楽しみです。



第1850回 定期公演 Bプログラム
2016年12月1日
サントリーホール  

プロコフィエフ/組曲「3つのオレンジへの恋」作品33bis
ラヴェル/バレエ音楽「マ・メール・ロワ」
ベートーヴェン/交響曲 第5番 ハ短調 作品67「運命」

指揮:シャルル・デュトワ



No.1850 Subscription (Program B)
Thursday, December 1, 2016   7:00p.m.

Suntory Hall

Charles Dutoit, conductor

Prokofiev / “The Love for Three Oranges”, suite op.33bis
Ravel / “Ma mère l’Oye”, ballet
Beethoven / Symphony No.5 c minor op.67
コメント (2)
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