その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

軽やかで洗練された「ドン・ジョバンニ」 NHK音楽祭2017 / パーヴォ・ヤルヴィ指揮 N響

2017-09-10 08:22:46 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)
 モーツァルトの傑作オペラを、パーヴォが個性的歌手陣と実力オーケストラを使ってまとめ上げ、作品・歌手・オケの三拍子が揃った、軽やかで洗練された素晴らしい公演となりました。

 N響の演奏も室内楽的な響きを含んだ香り深いもので素晴らしかったのですが、私的には、歌手陣のレベルの高さが印象的でした。各人がそれぞれ個性が引き立っていましたが、中でもレポレッロ役のカイル・ケテルセンのドスの利いた低音と溌溂とした演技が、終始、舞台を活力を与え、テンポの良いドラマに仕立てた思います。この人、2010年にロイヤルオペラで「道楽者のなりゆき」で聴いていますが、この時も演技が素晴らしく深い感銘を受けた歌手です。もっと来日して欲しい。また、ドン・オッターヴィオ役のベルナール・リヒターのテノールの美しさが格別。濁りのない、晴朗としたテノールがNHKホールの響き渡り、聴衆も固唾をのんで聞き入ってました。更に、ラストのドン・ジョバンニと騎士長の石像との対決シーンは、背筋が凍るような迫力。

 女性陣では、2012年にイングリッシュナショナルオペラで、ホフマン物語のヒロイン4名を一人で歌い切ったのを聴いたジョージア・ジャーマンのソプラノも5年ぶり。当時の初々しさも消え、売り出し中の新進実力派という雰囲気を漂わせ、清らかで繊細なソプラノを聴かせてくれました。ドンナ・エルヴィーラ役のローレン・フェイガンも、存在感抜群な美貌ソプラノで、パーヴォ喜ばせ組の一角なんでしょうねえ。ツェルリーナの三宅理恵も、洗練された美しい歌声です。

 演奏会方式ですが、簡単な舞台設定と小道具、それに照明効果をふんだんに活用して、シンプルなプロダクションのオペラと遜色がありません。興を削がれる変てこな演出より、ずっといいです。

 終演後は凄い拍手とブラボーの嵐。今シーズンのN響の活躍とNHK音楽祭の成功を予感させる、素晴らしいこけら落しのパーフォーマンスでした。


NHK音楽祭2017
2017年9月9日(土) 開場 2:00pm  開演 3:00pm
NHKホール 

モーツァルト/歌劇「ドン・ジョヴァンニ」全2幕(演奏会形式・字幕つき)
 

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
 
ドン・ジョヴァンニ:ヴィート・プリアンテ
騎士長:アレクサンドル・ツィムバリュク
ドンナ・アンナ:ジョージア・ジャーマン
ドン・オッターヴィオ:ベルナール・リヒター
ドンナ・エルヴィーラ:ローレン・フェイガン
レポレッロ:カイル・ケテルセン
マゼット:久保和範
ツェルリーナ:三宅理恵
 
合唱:東京オペラシンガーズ

NHK Music Festival
Saturday, September 9, 2017  3:00p.m.
NHK Hall

Mozart / "Don Giovanni", opera K.527 (concert style)

Paavo Järvi, conductor

Vito Priante, Don Giovanni
Alexander Tsymbalyuk, Il commendatore
Georgia Jarman, Donna Anna
Bernard Richter, Don Ottavio
Lauren Fagan, Donna Elvira
Kyle Ketelsen, Leporello
Kazunori Kubo, Masetto
Rie Miyake, Zerlina
 
Tokyo Opera Singers, chorus
コメント (2)
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