その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

奈良 仏像ツアー 第二部(奈良国立博物館)

2017-09-17 08:00:00 | 旅行 日本
 ホテルにチェックインした後(私が1週間間違えて予約したという大ポカがあったが、幸運にも空き部屋が一つあり、なんとかおさまった)、シャワーで汗を流し、夕方の奈良公園に繰り出す。

 行先は、奈良国立博物館。土曜日は一部、8時まで開館している。まずは、翌日に閉幕する特別展「源信」展を訪れる。源信については、大学受験の暗記の名残で、平安時代中期の天台宗の僧で、源信-『往生要集』-浄土宗の祖という一問一答的な記憶が残っているだけだったが、この特別展は偶然訪れたにしては、大当たりだった。



 平安時代の僧なので、本人の記録がそんなに残っているわけでは無いのだが、「地獄絵を含む六道絵(ろくどうえ)や阿弥陀来迎図(あみだらいごうず)といった源信の影響下で生まれた名品」(奈良国立博物館HP)が展示されている。平安時代の人が、死後の世界をどうとらえ、源信らが仏教にどう救済を求めたのかがわかる。現代人が見ても、地獄絵は怖い。

 「源信展」に閉館時間の7時まで居たあと、続いて、同博物館のなら仏像館へ。ここは8時まで開館している。飛鳥時代から鎌倉時代にいたる日本の仏像を中心に100体近くが展示されている。流石、奈良の国立博物館だ。国宝、重要文化財を始め数々の歴史的な仏像がもったいないぐらいに並んでいる。日中に拝んだお寺のお堂にあった仏像に比べると、博物館にある仏像はあくまでも観賞用途の匂いが漂っているのは残念だが、美しいものは美しい。一つ一つ見入ってしまう。

 展示は数か月毎に入れ替えがあるようで、この期の目玉は、新しく国宝指定を受けた「降三世明王坐像」。鎌倉時代に作られた明王像で大阪・金剛寺の所蔵のものだ。形相の激しさに思わず、後ずさりしてしまうほど。色が残っており、これがフルカラーだと怖さが倍増するに違いない。


≪降三世明王坐像≫

 閉館ぎりぎりまで滞在し、外に出ると奈良公園は真っ暗。日本有数の観光地と聞いて想像する町の夜とは思えない暗闇だ。暗闇の中から突然鹿が現れたりして、はっと驚かせられる。なかなかスリリング。駅方面に戻りつつ、ライトアップされた興福寺五重塔を見る。円形の月が塔の奥に見え、輝くほどの光を放っている。虫の鳴き声も聞こえ、歌でも詠みたくなる。東京では味わえない、夜の風景に一人で酒もなく酔いしれた。



 駅近くの閉店間近のうどん屋さんでうどんとかつ丼のセットを食べる。関西のうどんは、出汁がきいていて美味しい。客も自分以外には一組しかいない上に、有線と思われるスピーカーから流れる演歌も妙に旅情をそそる。う~ん、イメージ通りの完璧な奈良の一日だった。


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする