その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

日経デザイン編 『デザイン思考のつくり方』 (日経BP、2016)

2017-09-13 07:30:00 | 


 やや旬はすぎた感があるようだが、今さらのように「デザイン思考」なるものを勉強しようと思って読んでみた。デザイン思考とは何かという定義は、書く人によってそれぞれで、一定の定義は存在しないようだが、本書では「優秀なデザイナーやクリエイター、もしくはクリエイティブな経営者の豊かで斬新な思考法をまねることで、新しい発想を生み出そうとする手法である」(p8)としている。

 本屋で「デザイン思考」と銘打ったものが10冊近くあった中で、本書が一番事例が豊富そうだったので購入したのだが、あまりにもいろいろなものが種々雑多に紹介されていて、かえって混乱した。「日経デザイン」という専門誌の過去記事を編集したものが殆どなので、正直、書籍としての深みにも欠け、満足度は低い。

 私なんぞは、これまで散々、ロジカル・シンキングとかクリティカル・シンキングとか言って論理的に思考することを長年やってきたわけだが、世の中、こうした左脳的な話だけでは、世の中上手く行かないということは、「デザイン思考」という切り口で自分の仕事や会社の事業を振り返ると、実感として腑に落ちる。

 本書はあまりお勧めできないが、「デザイン思考」についてはもう少し勉強を深めたい。




目次

第1章 なぜ、デザイン思考が求められるのか
ケーススタディ●クリナップ「クリンレディ流レールシンク」の開発
特別対談●デザイン・シンキングで新しい時代に備えよ

第2章 Q&Aで学ぶ、失敗しない実践術
キヤノンに学ぶ、デザイナーの意欲を上げるには
ソニーに学ぶ、発売に結び付く組織体制を構築するには
リクシルに学ぶ、社内外でデザイン思考の存在感を示すには
積水ハウスに学ぶ、「草の根プロジェクト」の運営法は
KDDIに学ぶ、デザイン思考プロジェクトを継続させるには
ライオンに学ぶ、生活者の声を理解するには
ファミリアに学ぶ、経営者としてどのような態度で臨むべきか
鶴屋百貨店に学ぶ、外部のクリエーターをどう選ぶか
フットマークに学ぶ、社員の創造性を高めるにはどうするか
カナエルに学ぶ、外部クリエーターの力を活かすには

座談会●デザイン・シンキングで成功する企業、失敗する企業とは

第3章 トップクリエイター10人の思考術
田川欣哉氏 60人インタビューから導いた「金のリング」
えぐちりか氏 既存の表現を徹底的に調べ、今までにないものを提案
水野学氏 独自の「~っぽい分類」で対象をイメージ
太刀川瑛弼氏 機能や使用環境、利用者像の視点で状況を分析する
清水久和氏 ITツールを使い、2次元の世界では出ないアイデアを
田中良治氏 役割を先鋭化させ、最大の効果を生み出す
田子學氏 「その場所」にしかない世界で通用する価値を
北川一成氏 「人の情動の変化」をあらゆる角度から思考
岸勇希氏 自分が理解できない死角の存在を意識せよ
吉泉聡氏 物事の「境界」を常に疑問視する

第4章 社長に聞く、デザインと経営の極意
庫や パッケージと店舗だけがデザインではない
ビーサイズ デザインとは、プロダクトの存在意義を明確にすること
ない藤 真逆を目指すと見えて来る本当の価値
スノーピーク 経営者自身が欲しいと思えるまで開発を徹底
春華堂 次代の看板商品作りに外部デザイナーを呼び込む
GLM エクステリアデザインが資金調達を支援
ヤッホーブルーイング 提供するのは商品ではなく「楽しさ」

アンケート編
経営にデザインを生かす理由は/優秀なデザイナーの基準は
デザイナーとの契約の金額や形態は/デザイナーとの仕事の進め方や付き合い方は
デザイン効果の判断基準は/デザインの適用範囲をどう捉えるか/デザイン経営の課題は
インタビュー●創造性を生かせる企業だけが勝ち残る
コメント
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