世の中、「働き方改革」ばやりである。自分とこの会社もこの数年で相当変わった。社員の残業時間はかなり減ったし、在宅勤務やフレックスタイムなど制度面でも随分、柔軟になった。
組織の中での私の役割はどちらかというと旗振り役なので、あまり職場で大きな声では言えないが、この「働き化改革」どうも肚落ち感が無い。残業時間削減や制度改革が前面に出すぎていて、何のための「改革」かの共通理解がない。昨年だったか、サイボウズ社の広告で「ノー残業楽勝!予算達成しなくていいならね」「労働時間削減 結局現場にムチャぶりですか?」「早く帰れおじさんと結果出せおじさん、ふう~(ため息)」「さようなら深夜残業、こんにちは早朝出勤。(苦笑)」というコピーと若手・中堅社員のあきらめ顔、しかめっ面のポスターがあったけど、これは本当に傑作だと思った。
本書は、そんな納得感に欠ける「働き改革」に、「生産性」という一つの考え方の柱を与えてくれる。生産性が向上すると何が嬉しいのか?社員にとっては、同じ時間でより多くの仕事量がこなせるから、早く帰れて、ワークライフバランス(この言葉も微妙だが)につながる。また、同じ時間でより質の高い仕事ができるから、成果が上がるし、成長するので、やりがいアップ。会社にとっても、それは即ち競争力が高まるということだ。
本書が言うことは極めてシンプル。生産性とは、Output(成果を上げる)/Input(投入資源量(人・金・もの・時間等)を減らす)。なので、生産性向上のためには、「Inputを減らす」ことと「Outputを上げる」が重要。仕事の「断捨離」、デッドライン設定などでInputを減らすとともに、スキルを上げる、道具を使う(自動化、新技術・新製品)、やり方かえる(会議進行、資料作成等)、標準化などでOutputを増やすことができる。
読んでいて、今の会社の「働き方改革」にはInputを削る議論はあっても、Outputを上げる議論があんまりないなあと思った。そこが肚落ち感のない一因かもしれない。
目次
序 章 軽視される「生産性」
第1章 生産性向上のための四つのアプローチ
第2章 ビジネスイノベーションに不可欠な生産性マインド
第3章 量から質の評価へ
第4章 トップパフォーマーの潜在力を引き出す
第5章 人材を諦めない組織へ
第6章 チームの生産性向上が管理職の使命
第7章 業務の生産性向上に直結する研修
第8章 マッキンゼー流資料の作り方
第9章 マッキンゼー流会議の進め方
最終章 日本経済の課題としての生産性