その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

吉村昭 『破獄』(新潮文庫、1986)

2018-06-28 07:30:00 | 
 


 戦中・戦後の日本で、網走刑務所を含み4度の脱獄に成功した実在の人物を描いた実話に基づいた物語。超人的な脱獄スキルと精神力、逞しさには、ただ驚くばかり。

 また本書は、戦中戦後の日本監獄史の一面を持つのが、単なるミステリー的な脱獄ドキュメントに終わらない面白さがある。監獄と言えども、当然、アジア・太平洋戦争の影響と無縁ではあり得なったことが良く分かる。

 また、脱獄するのが「人」であるのと同様、監獄で働いている看守たちも「人」である。本書はそうした人間たちのドラマであることも十分に描いてある。

 「監獄」という特殊社会をケースに、超人、歴史、社会、人を描いた一冊である。
コメント (2)
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