その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

N響6月定期Aプロ/ 指揮:ウラディーミル・アシュケナージ/ドビュッシー没後100年 プログラム

2018-06-11 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


小雨が滴る中、代々木公園を抜けてNHKホールへ。久しぶりにアシュケナージさんが振る定演。ドビュッシー没後100周年と銘打ったコンサートでもある。

一曲目はイベールの「祝典序曲」。1940年に神武天皇即位2600年を記念して日本政府が作曲を依頼した作品とのこと。お祝い曲らしく明るく威勢の良い音楽なのだが、この後に続くドビュッシー没後100周年との関係性が分からず、このプログラミングの意味を測りかねた。音楽や演奏についてネガティブな感想は全くないが、この日の演目の中では浮いたものとなったのは否定できない。

この後のドビュッシー3曲は、ドビュッシーらしい色彩豊かな音楽で、アシュケナージさんとN響コンビが実に芳醇な音楽を作り上げていた。「ピアノと管弦楽のための幻想曲」は第2楽章の夜想曲がなにより美しかった。

ピアノ独奏のジャン・エフラム・バウゼさんは、何度かN響に登場しているようだが、私は初めて。アンコールのドビュッシー〈喜びの島〉は、「『喜びの島』はバトーの絵画「シテール島への巡礼」がモチーフ」(出典https://necogaku.com/lisle-joyeuse)らしいが、官能的とも言えるセクシーな曲であった。

後半の2曲はドビュッシーの管弦楽曲の中でも代表的なものであり、聴いた機会も少なくないが、アシュケナージさんのアプローチはとっても自然体で力みのない音楽作り。ドビュッシーの音楽がすうーっと体の中に染み込むような感覚だった。N響の演奏もフルート、オーボエなどの木管陣のソロを初めとした個人技とアンサンブルの美しさがしっかり噛み合っていた。とりわけ、「牧神の午後への前奏曲」の幻想的な繊細な演奏にはうっとり。

プログラムによるとアシュケナージさんももう80歳を超えたという。ちょっと信じられない。舞台袖から小走りに指揮台に向かうスピードはおそらくN響指揮者の中でも一番の速さだろうし、愛嬌のあるボディ・ラングレッジは皆に愛される。NHKホールも暖かい拍手に満ちていて、幸福感一杯にホールを後にした。



第1888回 定期公演 Aプログラム
2018年6月10日(日)
開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール

~ドビュッシー没後100年~
イベール/祝典序曲
ドビュッシー/ピアノと管弦楽のための幻想曲
ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
ドビュッシー/交響詩「海」

指揮:ウラディーミル・アシュケナージ
ピアノ:ジャン・エフラム・バヴゼ

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