幸運にもチケットを譲り受けたので、文化村ザ・ミュージアムで開催中のロシア展に行ってきました。国立トレチャコフ美術館から、19世紀後半から20世紀にかけてのロシア絵画が展示してあります。
お恥ずかしがら、ロシアの画家は全く知らず、どの絵も初見(のはず)になります。ただ、今回はそれが私には吉と出ました。先入観が働きがちな有名画家や既知の絵画を見るのとは異なり、虚心に絵に向き合って対話することができ、期待以上に堪能できた美術展となりました。
ポスターにも取り上げられているイワン・クラムスコイの「忘れえぬ女」も来日は8度目だそうですが、こちらも私には初見。馬車に乗ったロシアの上流階級の女性が、上質のコートに身を包み、車の上から見下ろすような視線が、気品と気位にあふれています。解説によると、幌を外したところに、この女性の革新性が表れているとのこと。
私としては、「忘れえぬ女」以上に、同画家による「月明かりの夜」の幻想的な絵が印象的でした。静寂な月夜の中で、池端で思いに耽るように座る一人の少女。神話や物語の一場面のような題材と画風はラファエル前派的で、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスを思い起こさせます。絵の前で、しばし足が釘付けになりました。また、その隣にあったニコライ・カサートキン「柵によりかかる少女」の(恋人を待つ)素朴で可憐な表情にもひかれます。
イワン・クラムスコイ 《月明かりの夜》1880年 油彩・キャンヴァス © The State Tretyakov Gallery
前半はロシアの四季を描いた風景画でした。素朴でむき出しの自然はロシアならではのもの。バーチャルロシア旅行をした気分に浸れます。風景画以外にも、都会や郊外での暮らしぶりが描かれた絵もありロシアを体感。
イワン・シーシキン 《正午、モスクワ郊外》1869年 油彩・キャンヴァス © The State Tretyakov Gallery
休日でもあり会場内はそれなりに混みあってましたが、鑑賞の支障になるほどではなく、コンパクトな会場は量に圧倒されることなく、マイペースで余裕をもって見られます。1月27日までなので、興味がある方は是非お出かけください。
《構成》
第1章 ロマンティックな風景
1‐1 春
1‐2 夏
1‐3 秋
1‐4 冬
第2章 ロシアの人々
2‐1 ロシアの魂
2‐2 女性たち
第3章 子供の世界
第4章 都市と生活
4‐1都市の風景
4‐2日常と祝祭