《冬枯れのNHKホール前》
今年のN響初めの演奏会はステファヌ・ドゥネーヴ指揮による19世紀後半から20世紀前半のフランス・イタリア音楽のプログラム。指揮者、独奏者、作曲家いずれもフランスに縁がある方々が中心となってます。ドゥネーヴさんは数年前にN響と共演されているようですが、私は初めて。今回、期待を大きく上回る素晴らしい内容でした。
4曲どれも良かったのですが、前半のゴーティエ・カプソンさんのチェロ独奏によるサン・サーンスのチェロ協奏曲 第1番と後半のレスピーギの交響詩「ローマの松」が特に印象的でした。サン・サーンスのチェロ協奏曲を聴くのは初めてでしたが、とても耳に馴染みやすい音楽で、違和感なく投入できます。カプソンのチェロの音が透明感あふれる上に揺るぎない強さを持った美音で痺れまくり。N響もカプソンとしっかり息があって、バランスも素晴らしい。20分程度の短めの協奏曲ですが、たっぷり楽しみました。
サプライズはアンコール。指揮のドゥネーヴが舞台後方に出してあったピアノに座り、カプソン・ドゥネーヴ共演によるサン・サーンス「動物の謝肉祭」から「白鳥」。曲の陰影、美しさが格別で、聴衆は固唾をのんで聞き入ります。当然ながら、終演後は割れんばかりの大拍手でした。新年早々のお年玉という感じです。
後半の「ローマの松」は、ドゥネーヴの柔らかいが崩れない音楽作りとN響の個人技とアンサンブル力が絶妙に組み合わった名演でした。面白かったのは第3楽章で、楽譜の指示通り、蓄音機によるナイチンゲールのさえずりが使われたこと。舞台の奥に、年代物の(昔のビクターのロゴマークのような)蓄音器が置かれ、それを操作して鳥のさえずりが再生されました。それが、N響の演奏ともぴったりマッチして、全く違和感なく古代ローマの世界を形成しており、感心、感服。最後は、観客席横のオルガンや撮影用のバルコニー席に金管陣の一部が登場し、ホール全体にサラウンド・ステレオ状態で、スケール感満載の音楽を聞かせてくれました。ドゥネーヴの音楽は色彩感豊かで、眼前に明るいイタリアの陽光が溢れるように浮かぶようです。新春の幕開けに相応しい演目と演奏でした。
期待以上のお年玉をもらった子供のようなウキウキ、にんまりの気分でホールを後にしました。今年も良い感じでスタートです。
第1903回 定期公演 Cプログラム
2019年1月12日(土)3:00pm
NHKホール
ルーセル/バレエ組曲「バッカスとアリアーヌ」第2番
サン・サーンス/チェロ協奏曲 第1番 イ短調 作品33
ベルリオーズ/序曲「ローマの謝肉祭」作品9
レスピーギ/交響詩「ローマの松」
指揮:ステファヌ・ドゥネーヴ
チェロ:ゴーティエ・カプソン
No.1903 Subscription (Program C)
Saturday, January 12, 2019
3:00p.m.
NHK Hall
Roussel / “Bacchus et Ariane”, ballet suite No.2
Saint-Saëns / Cello Concerto No.1 a minor op.33
Berlioz / “Le carnaval romain”, overture op.9
Respighi / “Pini di Roma”, sym. poem
Stéphane Denève, conductor
Gautier Capuçon, cello