ルーベンスというと、ずいぶん前に訪れたルーブル美術館の「ルーベンスの間」(ルーベンスの大作を一堂に集めた展示室)が思い出され、大げさで仰々しい作風に苦手意識があったのですが、ルーベンスを集めた企画展などはそうあるわけではないので、頑張って国立西洋美術館に行ってきました。
ルーベンスや影響を受けた画家の作品など70数点を集めた特別展は、期待以上に質の高いものでした。ルーベンスの作風が変わるわけはないので、私の趣向が変わったのでしょうか、以前感じたような苦手意識は全く感じることは全くなく楽しめました。
宗教画や神話をテーマに扱った大作の迫力が特に素晴らしいですね。人物がそのまま飛び出してきそうな臨場感、描かれた場面だけでなくその前後も含めて物語が脳内に展開されるようなドラマティックさ、ギリシャ・ローマの彫刻を思わせる男女の肉体美など、巨匠感丸出しの大作がいくつも展示してあります。
私的には、「セネカの死 」、「マリアの法悦」、「マルスとレア・シルウィア」、「エリクトニオスを発見するケクロプスの娘たち」(上記、パネルの絵)などに目が奪われました。作品によっては、エロチックこの上ない作品もありますね。先日観たフェルメールより年齢は70歳ちょっと年上になりますが、題材と言い、画風といい、同じバロック美術として括られるのは随分と違和感があります。
作品はルシュタイスタイン公国をはじめ、欧米の美術館から幅広く収集されています。週末の日中でしたが、込み具合も許容範囲で、じっくり鑑賞することができました。自信をもってお勧めできる美術展です。
《構成》
I ルーベンスの世界|Rubens’s Personal World
II 過去の伝統|The Traditions of the Past
III 英雄としての聖人たち ― 宗教画とバロック|Saints as Heroes: Sacred Painting and the Baroque
IV 神話の力 1 ― ヘラクレスと男性ヌード|The Power of Myth 1: Hercules and the Male Nude
V 神話の力 2 ― ヴィーナスと女性ヌード|The Power of Myth 2: Venus and the Female Nude
VI 絵筆の熱狂|A Furious Brush
VII 寓意と寓意的説話|Allegory and Allegorical Narration