ロンドンの近郊の町ルートンに生まれ育ったパキスタン系移民の16歳の少年が主人公。アジア的な家父長的家族の中で価値観の違いや差別に悩みながら、ブルース・スプリグスティーンに魅せられ、成長していく。実話にインスパイアされた物語とのことだ(エンドロールでモデルとなった人たちの写真が紹介される)。成長物語であると同時に、イギリスにおける文化、差別を描いた社会的映画でもある。「ベッカムに恋して」に似てるなあと思って後で確認したら、同じ監督さんだった。
タイトルはスプリングスティーンの歌のタイトルから取っている。スプリングスティーンは私自身は学生時代に少し聴いてたけど、ちょっとあまりにもストレートなメッセージソングに苦手意識があった。でも、この映画で全編に流れるスプリングスティーンは、社会の現実や周囲の人達との関係に悩む思春期の少年の思いと絶妙にマッチしていて、心地よい。
見ていて楽しいし、視聴後は元気も出るし、イギリスの移民社会の勉強にもなる。主人公のサンフラズ・マンズールの演技が自然で好感が持てる。また、主人公の親父の人とキャラが、私がロンドン駐在した当時の経理課長にそっくり(彼はスリランカ移民1世だったけど)で笑った。リアルな移民家庭やイギリス社会が描かれていると思う。
日本では4月に「カセットテープ・ダイアリーズ」というタイトルで公開されるようだ。良く分からん邦題になってしまったが、良質なイギリス映画でお勧め。
※2019年12月に機内で視聴
2019年製作/117分/G/イギリス
原題:Blinded by the Light
配給:ポニーキャニオン