その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

「ブダペスト国立西洋美術館 & ハンガリー・ナショナル・ギャラリー所蔵 ブダペスト―ヨーロッパとハンガリーの美術400年」 @国立新美術館

2020-03-09 07:30:00 | 美術展(2012.8~)


コロナウイルス感染騒ぎで国立新美術館も3月15日まで休館中なので、3月16日までの開催期間の本展がどうなるか分からないが、幸運にも休館前に訪れることができたブタペスト展の印象を残しておきたい。

 1869年に修好通商航海条約に調印した日本とハンガリー(当時はオーストリア=ハンガリーニ重帝国)にとって、今年は外交関係を樹立150周年になるということで、その節目として企画された展覧会である。正直、さほど大きな期待は持たずに出かけたのだが、ルネサンスからの西洋絵画の巨匠の作品から20世紀のハンガリー美術までを一堂に揃える見応えたっぷりの企画展だった。

 前半は北方ドイツ、イタリア、スペイン、オランダと、ルネサンスから18世紀までの西洋美術史の王道を行く展示。いきなりルカス・クラーナハ(父)の《不釣り合いなカップル 老人と若い女》と
《不釣り合いなカップル 老女と若い男》が並んで展示されていて狂喜したが、その後もティツィアーノあり、ヴェロネーゼ、バルトロメ・ゴンザレス、ヤン・ステーン、エル・グレコとそうそうたる巨匠たちの作品が惜しみなく展示してあった。前半だけでもかなりお腹いっぱいになる。


ルカス・クラーナハ(父)《不釣り合いなカップル 老人と若い女》

 後半はハンガリー美術を中心に19世紀・20世紀初頭の絵画を展示。失礼ながら、ハンガリーの画家は名前すら知らない方ばかりだが、西ヨーロッパの画風を吸収しつつ、東ヨーロッパとしてそれらを消化し超えていこうとする意欲が伝わってくる。勝手な印象だが、ゴッホ、マネ、ターナー、バーン・ジョーンズなどを思い起こさせる作品があった。

個人的には、勝手に「美女の間」と呼んだ「 レアリスム―風俗画と肖像画」のコーナーが嬉しかった。ポスターにもなっているシニェイ・メルシェ・パール 《紫のドレスの婦人》を初め、ロツ・カーロイ春—リッピヒ・イロナの肖像》、ギュスターヴ・ドレ 《白いショールをまとった若い女性》、ベンツール・ジュラ 《森のなかで本を読む女性》など美女に囲まれる。う~ん、かなり幸せな時間である。


ギュスターヴ・ドレ 《白いショールをまとった若い女性》

この手の美術館名を関した美術展には、いくつかの名作と一緒に大したことない作品も併せて持ち込まれる「セット販売」も珍しくないと思うのだが、本展は掛け値なしに名作揃い。下に作品リストから抜粋した構成を見て頂ければ分かるのだが、テーマ、種類もほぼルネサンス以降の西洋美術史を網羅しているので、とにかく時間とエネルギーがかかる。ちょっと展覧会の行方が気になるが、もし再開されるようなら、エネルギー充填して気合たっぷりで出かけられることをお勧めします。


【構成】
Iルネサンスから18世紀まで
1. ドイツとネーデルラントの絵画
2. イタリア絵画
3. 黄金時代のオランダ絵画
4. スペイン絵画─黄金時代からゴヤまで
5. ネーデルラントとイタリアの静物画
6. 17-18世紀のヨーロッパの都市と風景
7. 17-18世紀のハンガリー王国の絵画芸術
8. 彫刻

II 19世紀・20世紀初頭
1. ビーダーマイアー
2. レアリスム―風俗画と肖像画
3. 戸外制作の絵画
4. 自然主義
5. 世紀末─神話、寓意、象徴主義
6. ポスト印象派
7. 20世紀初頭の美術─表現主義、構成主義、アール・デコ

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