ロンドンにはお勧め美術館がたくさんあるが、その中でもユニークさ、面白さ、質の高さで独自のポジションを確保しているのが、ナショナル・ポートレート・ギャラリーだ。隣接したナショナル・ギャラリーと比べると館内が狭いのは残念だが、イギリスの歴史・伝統・価値観を知るのにこれ以上のところはないと思う。本展は、そのナショナル・ポートレート・ギャラリーから、チューダー朝から現代のウィンザー朝に至るイギリス王室とその「物語」を肖像画で辿る展覧会である。
展示されている100点近くの肖像画そのものも良いのだが、『怖い絵』の中野京子さんをナビゲーターに解説される絵の背景にある「物語」が実に面白く、興味深い。展示の仕方を含めたプロデュースの力を感じる展覧会だ。エリザベス女王、ビクトリア女王等の名前は知っていても、イギリス史には縁遠い人もイギリス史に興味をもつこと間違いない。
後半には、現エリザベス女王2世やダイアナ妃などの現代史としての王室も展示されている。美しいエリザベス女王2世の若き姿から品性、知性と覚悟が滲み出る現在の姿は、長き間、国を支えた女王の年輪が滲み出ていて感動する。
会期スタート間もないころに訪問したせいか、金曜夜の時間帯はとっても余裕を持ってみることができた。来年1月11日までの開催なので、お出かけをお勧めしたい。
2020年10月16日 訪問