その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

佐々木俊尚『現代病「集中できない」を知力に変える 読む力』東洋経済新報社、2022

2022-03-31 07:10:34 | 

ジャーナリストの佐々木俊尚氏が、自らの読書術、仕事術、情報見極め術、整理術など現代を生きるノウハウを惜しみなく開陳した1冊。インターネットメディアへの向き合い方もしっかり記述され、今の世に相応しい内容だ。正直、ついて行けない(とても自分には真似できない~)ところもあるが、活用できるところをつまみ食いするだけでも十分だと思う。

一番のなるほど部分は、今の世を「集中力を長時間、保てない時代」と割り切った現実的なアプローチ。集中する時間を確保しようとするのは止め、いかにスキマ時間を活用して本を読むようにするかを考える。本、PC、スマホ、タブレットなどのマルチデバイスをフル活用して、小刻みに読むことを推奨している。

そして、筆者の独自ノウハウである散漫さを逆利用した「散漫力」によるマルチタスクワーキングの方法が紹介される。やるべきことを棚卸する。それを「重いタスク」と「軽いタスク」にわける。そして「軽いタスク」から初めて、「重いタスク」と交互にこなす。その時間間隔(インターバル)は人によって違うので人次第だが、3分から初めて最大15分でセットするのがおすすめという。

自分には、このやり方も、段取りセットするだけでも手間がかかりそうでなかなかハードルは高そうだ。ただ、もうこの世の中、集中するのは無理。集中しなくても良い、その中でどう生産性を上げるかを考えるというのは、逆転の発想で新鮮だった。自分なりのやり方を考えるのだろう。

そんなのもありなのかと驚きのやり方もあった。「名著・難解な本を読むコツ」として、読む前に解説記事、アマゾンレビュー、入門書、マンガ・映画を順に進め外堀情報を得てから読むと良いとアドバイスされる。名著は多様な視点を学ぶための素材であり、血肉にするためにどう読むかが大切と説く。そして、「罪と罰」の読み方が具体例で示される。個人的には、かなり実利に振ったアプローチであることや、そもそもこんな読み方ですら、落ち着いて集中しないとできないのではと思えたが、この道のプロはこういう読み方をするのか~と感心した。

他にも様々な筆者の実践が紹介されている。取り入れられるかどうかは別として、世の中で情報のキュレーションを生業としている筆者のプロの仕事術・情報術を垣間見るのは勉強になる。機会があれば手に取られては。


【目次】
◆序章◆まずは現代の知的生産に必須の「5つの大前提」を知る
◆第1章◆まず「落とし穴」を見極め、「読むべきもの」を選別する──情報源をふるいにかける
◆第2章◆ネットは「何を」見ればいいのか──良質な「プッシュ情報」と「プル情報」を同時に手に入れる
◆第3章◆SNSをどう使いこなすか──「情報ツール」としてツイッターを使いこなす。SNSでの「プル情報」のとり方
★「情報ツール」としてツイッターを使いこなす秘訣
◆第4章◆選んだ記事をどう読み、どう整理・保存するか。情報整理の方法──「あとで読む」アプリを使う。「ポケット」が最強の理由
◆第5章◆本は「何を」「どう」読めばいいか──本の見つけ方&選び方、具体的な読み方、名著を読むコツ、電子書籍&リアル書店の活用法◆第6章◆知識や情報を活用するカギは「2つの保存」を使い分けることだ──「4つのステップ」で、自分のための「知肉」を育てる
◆第7章◆脳をクリアな状態にする「二刀流」のすすめ──日常の雑務を徹底的に効率化し、時間を捻出するために、ツールは何を使うか
◆第8章◆散漫力を活用し「最適なインターバル」で仕事を回す!「マルチタスクワーキング」の秘訣──タスクを組み合わせ、「短い集中」を積み重ねる

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