その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

リッカルド・ムーティ指揮 東京春祭オーケストラ/ シューベルト交響曲第8番《未完成》

2022-03-20 07:30:02 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

ムーティの春祭オーケストラのチケットが残っているツイートを目にして、慌てて2日前にチケットを購入して、文化会館を訪れた。

個人的にムーティさんは2010年3月のフィルハーモニア管以来、12年ぶりである。4階席からオペラグラスで見るムーティさんは、ずいぶんお年を召されたなあ~というのが正直な印象。でも、その佇まいやオーラは壮年期と全く変わらず80歳を超えているようにはとても見えない。演奏前をマイクを取って、ウクライナの状況と音楽・音楽家について一言。「無垢な人たちが殺されている。そんな中で私たちは演奏し、聴く。・・・本来、音楽とは愛、平和を希求するもの。・・・ウクライナのために演奏したい」といった内容だった。世界の音楽界のリーダーの一人であるムーティさんらしい、真摯で、責任感溢れるスピーチだった。

初めて聴く春祭オーケストラ。若手演奏家を本音楽祭に合わせて募っているとのことだが、ステージに登場したメンバーは確かに若手の方だが、普段拝見しているN響の主要メンバーが沢山いらしたので驚いた。そして、モーツァルトの交響曲39番が始まると、その美しく、清明な音色にびっくり。音大オケ+αぐらいなのかと思っていたら、桁違いの巧さだった(終演後にWeb見たら、在京オケの首席クラスの人たちが沢山名を連ねていたので、今更のように納得)。一方で、N響や他のプロオケのような普段から一緒にやっているメンバーならではの調和ではない化学反応も感じらる。サッカーに例えるとオーケストラの定期演奏会がクラブチームのリーグ戦である一方、春祭オーケストラはワールドカップのナショナルチームのような印象だった。

前半のモーツァルトも素晴らしかったのだが、悶絶したのは後半のシューベルト〈未完成〉交響曲。この曲を生で聴いたのは10年以上ぶりで、これが私の筆力ではとても表現できない素晴らしさだった。弦の厚いが重くないアンサンブル、オーボエをはじめとした管の耳が自然に立つような調べ。微に入り細に入った気づかいはありつつも、小手先の調整ではなく、正々堂々、王道を直進し、音楽そのものを聴かせてくれる。ムーティさまさまである。食い入るように聴いた。

ラストのイタリア風序曲は、〈未完成〉交響曲後のアンコール曲をあらかじめプログラムに入れておきましたという感じ。軽妙で、明るい音楽が、お口直しのデザートのように耳に心地よかった。

チケット買って、本当に良かった。空席情報を上げてくれたフォロアーさんにも感謝。

2022年3月18日(金)19:00開演
東京文化会館 大ホール

出演
指揮:リッカルド・ムーティ
管弦楽:東京春祭オーケストラ

曲目
モーツァルト:交響曲 第39番 変ホ長調 K.543
シューベルト:
 交響曲 第8番 ロ短調 D759《未完成》
 イタリア風序曲 ハ長調 D591

Riccardo Muti Conducts Tokyo-HARUSAI Festival Orchestra

Date / Place
March 18 [Fri.], 2022 at 19:00(Door Open at 18:00)
Tokyo Bunka Kaikan Main Hall

Cast
Conductor:Riccardo Muti
Orchestra:Tokyo-HARUSAI Festival Orchestra

Program
Mozart:Symphony No. 39 in E-flat major K.543
Schubert:
 Symphony No. 8 in B minor D759 “Unfinished”
 Overture in C major D591 “In the Italian Style”

コメント
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