2019年8月にアントネッロ/濱田のバロックオペラ「オルフェオ」を見て、ユニークな企画や完成度高い公演がとっても印象的だった。しかも、今回は演目が一度は観たいと思っていたヘンデル「ジュリオ・チューザレ」だったので、迷わず川口まで遠征。オミクロンで座席数制限をしていたのか、購入した後方席は利用しなくなったとのことで、なんと最前列(座席的には前2列を明けているので第3列)に移動となった。これは開演前からラッキー。
事前に何の予習もしてなかったので、会場入り口に終演が午後10時10分頃と書いてあったのを見て仰天したが、実際は3時間半を全く感じさせない(お尻だけは痛かった)、時間を忘れるほど没入できた公演だった。
歌手陣はそれぞれ出番があり、気持ち入った美声を聴かせてくれたが、筆頭はクレオパトラ役の中山美紀さん。そのソプラノは曇りないもので、ホール一杯に響く歌声は、小柄な彼女がホールを支配しているような力を感じるものだった。演技も溌溂としていて、少女から大人に成長するクレオパトラのほとばしる生命力が現われていた。
チェーザレの家来ニレーノを演じた彌勒忠史も印象的。カウンターテナーの美しい歌声とコミカルな演技が舞台の存在感抜群で場を盛り上げた。
濱田芳通が指揮するアントネットのアンサンブルも古楽器特有の音色に魅かれる。聴く者を安心させる優しい音色が穏やかな気分にさせてくれる。
舞台中央にオケが陣取り、歌手陣がオケの前方で簡単な小物の舞台装置とステージ後ろのスクリーンに映した映像での舞台仕立ても、必要十二分の演出と感じた。硬い歴史劇というより柔らかいコメディタッチのアプローチも違和感なく、(他の演出を知らないので比較はできないが、)3時間半を集中して観劇できた一因だと思う。
前半最後に、家来3人衆の幕間劇が挿入されていたが(ここだけ日本語)、これが大笑いできる小芝居で、作曲当時のイギリス政治の状況も抑えつつ、このドラマの歴史劇というより人間劇としての面白さを引きたてた。
きっと他のお客さんも満足感一杯だったのだろう。終演後の拍手も大きく、暖かいもので、「楽しませて頂きました~」という気持ちが籠っていた気がした。濱田芳通とアントネットの次の企画が楽しみだ。
日時:2022年3月3日(木)18:30開演(17:45開場)
指揮:濱田芳通 演出:中村敬一
演目:G.F.ヘンデル作曲 オペラ「ジュリオ・チェーザレ」(原語上演字幕付き)
会場:川口総合文化センター・リリア 音楽ホール
キャスト:
ジュリオ・チェーザレ:坂下忠弘
クレオパトラ:中山美紀
トロメーオ:中嶋俊晴
アキッラ:黒田祐貴
コルネーリア:田中展子
セスト:小沼俊太郎
クーリオ:松井永太郎
ニレーノ:彌勒忠史
舞踏:聖和 笙
管弦楽:アントネッロ
バロック・ヴァイオリン:杉田せつ子・天野寿彦・遠藤結子
バロック・ヴィオラ:佐々木梨花
バロック・チェロ:武澤秀平
ヴィオローネ:布施砂丘彦
テオルボ:高本一郎
バロック・オーボエ:小花恭佳
フラウト・トラヴェルソ/リコーダー: 中島恵美
ナチュラル・ホルン: 大森啓史・ 藤田麻理絵・ 根本めぐみ・ 松田知
チェンバロ&バロックハープ: 曽根田駿
オルガン:上羽剛史
パーカッション:和田啓