「椿姫」を観るのは10年以上ぶり。物語として悲しすぎるので、進んで足を運ぶことは無くなっていたのですが、今回は代役として中村恵理さんが登場すると耳にして、急ぎ、初日のチケット購入しました。ロイヤルオペラのヤングアーティストプログラム在籍時から自称ファンですが、この前の「蝶々夫人」はスケジュールの都合がつかず仕舞い。代役出演万歳で、私にとってはリベンジです。
そして、「買っておいてよかった!」と快心の笑みがこぼれる、恵理さんの素晴らしいパフォーマンスを始めとした充実の公演でした。
きっと誰もが認めるこの日のMVPは恵理さん。そのソプラノはうっとりする美しさ。繊細な歌声にしっかり芯が通っていて、全く乱れがないです。表現力も抜群で、ヴィオレッタの喜び、惑い、悲しみがこもってました。演技も迫真の熱演。正直、パリの高級娼婦ヴィオレッタの役柄と恵理さんのイメージはややアンマッチではないか(私的にはリューとか蝶々夫人とかがはまり役)と心配だったのですが、全くの杞憂でした。
アルフレードのマッテオ・デソーレ、ジェルモンのゲジム・ミシュケタも良かった。デソーレは柔らかいイタリアテノールで耳にやさしい。良家のおぼっちゃま君のイメージともぴったり。そして、ミシュケタの重量感・安定感たっぷりのバリトンにも痺れました。この主要3役がハイレベルで安定していたおかげで、地に足がついた締まった舞台となってました。
そ以外の歌手陣も夫々しっかり仕事してましたし、合唱団はいつものハイレベルな合唱で、主要3役と一緒に舞台を盛り上げてくれました。
ピットに入った東響も良かったです。初めて接するユルケヴィチの指揮も満足(この方、ウクライナ出身の方とのことです)。東響からダイナミックレンジの広い音楽を引き出してました。
新国立劇場では何度か使われているプロダクションのようですが(私は初めて)、シンプルで美しい色彩に満ちた舞台も物語・音楽とマッチしていて好みでした。ただ、いつもの4階席からなので舞台は全景を捉えきれず欲求不満は残り、舞台につり下がった傘とか、ピアノが様々な用途で使われる意味合いとかは、理解しかねるところはありました。(本当はここが分からないとこの演出の本旨は理解できてない可能性大です・・・)。
終演後は9割がた埋まっているように見える客席から、大きな拍手が寄せられ、カーテンコールも普段を上回る回数。恵理さんをはじめとするスタッフ、キャストを称える気持ちを共有でき嬉しい。
久しぶりの「椿姫」でしたが、改めて定番オペラとしての強み・良さを再認識。どの音楽も美しいし、歌手の見せ場も多い。物語も典型的なメロドラマ。「椿姫」の世界の余韻にどっぷり浸りながら帰路につきました。
2022年3月10日[木]19:00
ジュゼッペ・ヴェルディ 椿姫
全3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉
予定上演時間:約2時間45分(第Ⅰ幕・第Ⅱ幕1場75分 休憩30分 第Ⅱ幕2場・第Ⅲ幕60分)
スタッフ
【指 揮】アンドリー・ユルケヴィチ
【演出・衣裳】ヴァンサン・ブサール
【美 術】ヴァンサン・ルメール
【照 明】グイド・レヴィ
【ムーブメント・ディレクター】ヘルゲ・レトーニャ
【再演演出】澤田康子
【舞台監督】斉藤美穂
キャスト
【ヴィオレッタ】中村恵理
【アルフレード】マッテオ・デソーレ
【ジェルモン】ゲジム・ミシュケタ
【フローラ】加賀ひとみ
【ガストン子爵】金山京介
【ドゥフォール男爵】成田博之
【ドビニー侯爵】与那城 敬
【医師グランヴィル】久保田真澄
【アンニーナ】森山京子
【ジュゼッペ】中川誠宏
【使者】千葉裕一
【フローラの召使い】上野裕之
【合唱指揮】三澤洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団
Music by Giuseppe VERDI
Music Drama in 3 Acts
Sung in Italian with English and Japanese surtitles
OPERA PALACE
10 Mar
CREATIVE TEAM
Conductor: Andriy YURKEVYCH
Production and Costume Design: Vincent BOUSSARD
Set Design: Vincent LEMAIRE
Lighting Design: Guido LEVI
Movement Director: Helge LETONJA
CAST
Violetta Valéry: NAKAMURA Eri
Alfredo Germont: Matteo DESOLE
Giorgio Germont: Gezim MYSHKETA
Flora Bervoix:KAGA Hitomi
Visconte Gastone: KANAYAMA Kyosuke
Barone Douphol:NARITA Hiroyuki
Marchese D’Obigny:YONASHIRO Kei
Dottor Grenvil:KUBOTA Masumi
Annina:MORIYAMA Kyoko
Giuseppe:NAKAGAWA Masahiro
Commissionario:CHIBA Yuichi
Domestico di Flora:UENO Hiroyuki
Chorus: New National Theatre Chorus
Orchestra: Tokyo Symphony Orchestra