こげの耳に★ねんぶつ★

たわいない日々の思うことと愛犬こげと花が咲いていたら花の写真など

旧古座町の民話

2010-05-24 05:34:34 | 和歌山県


我が家は読売新聞を購読しています。巨○軍ファンではないですが読みやすさがいいので。

新聞は串本の取り扱店が配達しますが、時々このような『読み物』のチラシが入るときがあ

ります。№260にもなるようで面白い『読み物』のときは私も読みます。先日は

重畳山の牛鬼退治 伝承民話より【串本町(旧)古座町の民話】 という『読み物』でした

ここにそれを引用して書いておきます。

 熊野灘をはるかに見下ろす重畳山は旧古座町と古座川町にまたがる標高三百一メートルの

山でその裾野はゆるやかに広がっています。

 この山は、むかし紀南地方の「女人高野」とも呼ばれ、今から千百年あまり昔の嵯峨天皇

のころには、弘法大師も山頂にこもって修業しており、現在も残されている神王寺の開基と

なったといわれている聖地です。

 ところが事もあろうに、その聖地にいつの頃からか魔物がすみつきました。全身真っ黒い

毛におおわれた牛に似た巨大な怪物で、重畳山をゆり動かさんばかりに「ウォーッ、ウォー

ッ!」と吠える声は、不気味に山から谷へこだまして、村人たちを恐怖のどん底に突き落と

しました。おまけに、山の中でこの怪物に出会ったが最後、うまく家に逃げ帰れたとて、そ

の日から高い熱をだして、遂には狂い死んでしまうのです。

 それでも、村の人達にとっては、山は大切な場所で四季おりおりの山菜を摘んだり、マキ

を取ったり畑を切り開いて作物を植えている人もあって まるきり寄りつかないわけにもゆ

きません。・・・なんとか怪物を退治しなければ・・・と何人かの人が考えたのも無理のな

いことです。けれども怪物退治に出かけた人は、誰一人として帰ってきませんでした。

 みんなあの重畳山の怪物にやられたのです。

 この噂はパッと広がり、もうこの頃では誰一人として山に足を踏み入れようともしません

重畳山の牛鬼・・・と聞けば、泣く子もピタリと黙ってしまうほどで もう村はさびれる一

方です。

 このころ、麓の村にめっぽう鉄砲の上手な若者が住んでいました。村の人々の難儀を見て

なんとか怪物牛鬼を退治してやろうと、その機会を狙っていたのです。

 まず化け物について、いろいろ知っておかなければなりません。そこで村の老人達の間を

尋ね廻って、化け物のことを教えてもらいました。

 なんでも化け物は、相手の後ろの方に本当の姿を隠し、前の方でいつわりの姿を見せる事

が多いそうだと分かりました。ですから誰でも前に現れた姿に気を取られている間に、後ろ

方からガブリとやられてしまうということです。化け物や怪物を退治するときには、いつも

自分の背中の方に注意しなければならない・・・。という事を教えてくれた老人もいました

 若者はあれやこれやらと化け物の知識を頭に入れ、いよいよ牛鬼退治にかかることになり

ました。食糧もどっさり持ち、愛用の鉄砲と笛をもって山に出発したのです。

 村の人達は・・・危ないからやめなさい・・・と、何度も止めたのですが、若者は一向に

聞き入れようともせず、とうとう山に出かけました。

 うっそうと茂った原始林は、行けども行けども果てしなく、とうとう山深いところで日は

くれてしまいました。若者は手ごろな土地を選んで、マキを集めて火を燃やし、持ってきた

大きな握り飯をパクついている時、急に風が吹いてきたのです。その風はなんとなく

生暖かで、一寸薄気味悪くなってきたので若者は、腰から愛用の笛を取り出して吹きはじめ

ました。静かな山の中に、笛の音は高く低く、またある時は流れる雲のようにゆったりと、

ある時には小川の流れるせせらぎの音にも似て、美しく響き渡りました。

 するとその笛の音に誘われたかのように、若者の前に美しい娘が姿を現しました。かすり

の着物を着たその娘は「たしかにこの辺りから美しい笛の音が聞こえたが・・・」と、探し

ていました。この時、若者はハッと気がつきました。村の老人が教えてくれたのはこの事だ

と気がつき、そこでソロリソロリと鉄砲を引きよせて弾をこめ、自分の背中の方へクルリと

向きかえり一気に引き金を引きました。

「ズドーン」という音がこだますると「ギャーッ!」という物すごい悲鳴が聞こえてきまし

た。けれども若者はそれどころではありません。鉄砲と笛を横抱きに抱え込むと、一目散に

ヤマを駆け降りてゆきました。

 そして家へたどりつくと、フトンをかぶって震えていたのです。なにしろ、何人もの村人

をとり殺した怪物です。うまく命中して死んでればよいのですが、手傷でも負うて、仇を

討ちにやってこられては大変・・・と考えれば考えるほど気になってとうとう朝までマンジ

リともしません。

 朝が来ました。怪物はどうなったか・・・と牛鬼の正体を見きわめるべく、若者は昨夜の

ところに行ってみました。すると谷底には牛鬼の死体はなく、枯れ木のような大きな骨が

ゴロゴロところがっていました。けれども若者は気が狂ってしまったらしく「大きかった!

大きかった!」と口走るだけでそれから間もなく死んでしまったという事です。

 ところで、この重畳山で 昭和四十九年八月二十八日の正午ごろに、山口啓さんという人

が逆八の字形の三十センチほどの角をはやした、口の周りが真っ赤な牛のような化け物に出

会ったんですって・・・・・・。

 ひょっとすると野生化した牛だろうという人もありますが、やはり熊野の深い山々は人間

のはかり知れない謎を秘めている。



というお話だけど、牛鬼というのは『ゲゲゲの鬼太郎』によく出てくるヤツだな。なら、

全国各地に牛鬼はいたわけで、鬼という漢字がつくから鬼の仲間?民話や昔話に出てくる

鬼はつのが生えていて、顔が赤かったり強面だから牛鬼が鬼の進化前かもしれない。重畳山

に牛鬼がいたなんて初耳で、ちょっとばかし物知りになった気分のチラシでした。『ゲゲゲ

の鬼太郎』では鬼太郎の敵である ぬらりひょん の手下になっていたような牛鬼だけど

本当は普通の牛だったのかも・・・牛・・・ここ数日のニュースで口蹄疫(こうていえき)

で殺処分される牛や豚の話を聞くたび、胸が痛い思いで。どうしてここまでになってしまっ

たのか、他に伝染するのを防ぐために仕方のないこととはいえ私たちは何か間違ってはいな

いのか?と思う。食用になってしまう牛や豚であるけどそのために産まれただけではなく

命があるという事も知っておかなくてはいけないのだ。科学や医学が発達したいま、防げな

いというのは食物連鎖の頂上にいる人間の怠慢でもあるんじゃないかな。。。とワタクシ的

意見です。

 しかし、この民話、村人は退治しに山へ行ったきり誰も帰ってこなかった・・はずなのに

魔物が前方にいつわりの姿を現し、後方に真の姿を現してるって・・なんで知ってるんだか

物陰に隠れて村人が襲われるのを見て逃げ帰ってきたのか?ならば、戦いもせずに隠れてい

るくらいの人間なら、魔物の正体を見たらそれこそ発狂するんでは?と少し思ったりして。


コメント
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