Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ブラジル風バッハ

2009年08月24日 | 音楽
 今年はブラジルの代表的作曲家ビラ=ロボスの没後50年。それを記念して連作「ブラジル風バッハ」の全曲演奏会がひらかれた。
 「ブラジル風バッハ」は第1番から第9番まで全9曲。楽器編成はピアノ独奏から室内楽、無伴奏合唱、オーケストラと多岐にわたっている。作曲年代は1930年から1945年まで。当日の指揮者ロベルト・ミンチュクによれば、全曲を一気にやるのはおそらく世界でも初めてではないかと――。

 以下、演奏順に寸描を。
 最初に演奏されたのは第6番。この曲はフルートとファゴットの2重奏。ファゴットのえがく太い線がとくに魅力的に感じられた。(フルートは斉藤和志、ファゴットは黒木綾子)
 第9番は無伴奏合唱。後の編曲による弦楽合奏版で演奏されることが多いが、オリジナルはこちら。私はオリジナル版できくのは初めてだが、ひじょうに高度な合唱曲で、ビラ=ロボスの作曲技法の洗練を感じた。(新国立劇場合唱団)
 第4番はピアノ独奏。この曲も後の編曲のオーケストラ版できいたことがあるが、ピアノ独奏できくのは初めて。このほうがブラジル風の音の感覚が感じられた。(白石光隆)

 休憩の後、第1番はチェロ8本。あらためて考えてみると、チェロのみによる合奏という発想がユニークだ。ビラ=ロボスはチェロが得意だったそうだが、仲間とチェロ合奏を楽しむことがあったのか。名曲だが、演奏は低調。(東京フィルのチェロ・セクション)
 第5番はソプラノ独唱とチェロ8本。おそらくビラ=ロボスのもっとも有名な曲だが、生できいてみると、人の声の官能性に驚く。(ソプラノ独唱は中嶋彰子)
 この曲の歌詞はブラジルの風土を反映して美しい。その一部を引用すると――、

「夕暮れ、美しく夢みる空間に
 透きとおったバラ色の雲がゆったりと浮く!」(訳:濱田滋郎)

 この後、約30分の休憩。ロビーではギター独奏で「ブラジル民謡組曲」が演奏されて、フェスティヴァル気分を盛り上げてくれた。(益田正洋)

 第3番はピアノとオーケストラ。この曲は昨年、某オーケストラがとりあげたが、さっぱり共感のない演奏だったのでがっかりした記憶がある。この日は、多少粗いが、ラテン的なノリの演奏。ピアノは文句なし。(ピアノは白石光隆、オーケストラは東京フィル)
 第8番はオーケストラ。この曲にも粗さを感じたせいか、今になると印象が薄い。

 第2番もオーケストラ。私の愛してやまない曲だが、生では初めてきいた――私は今までフル・オーケストラだと思っていたが、なんと、室内オーケストラだった。
 最後は第7番で、これもオーケストラ。この曲では透明感のある演奏がきかれて、よい締めくくりになった。
(2009.08.22.東京オペラシティ)
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