ラザレフ&日本フィルによるプロコフィエフ交響曲全曲演奏プロジェクトの第3回。この日のプログラムは次のとおりだった。
(1)チャイコフスキー:幻想的序曲「ハムレット」
(2)モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番(ピアノ:田村響)
(3)プロコフィエフ:交響曲第3番
私はチャイコフスキーの「ハムレット」を生できくのは、これが初めてかもしれない。考えてみれば、チャイコフスキーのような人気作曲家でも、演奏会で演奏されている曲はごく一部の曲にかぎられているのだ。
この曲は交響曲第5番と同時期につくられたとのこと。チャイコフスキーが円熟のきわみに達したころの作品で、語り口のうまさが際立っている。オフェーリアをあらわすというオーボエの旋律はロシア情緒をたたえていて、とくに印象的だ。この部分ではラザレフが客席を振り返り、「どうです、この旋律は」というような表情をみせた。
モーツァルトのピアノ協奏曲第27番は、いつものように小編成で流れのよいオーケストラだったが、田村響のピアノは一本調子でニュアンスに乏しいと感じた。本人としては意図してマイペースを守っていたのではないかと思うが、私はだんだん退屈になった。もっとも、音はきれいだったが。
田村響は2007年のロン・ティボー国際コンクールに優勝して話題になった。私もその当時、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番をきいて、往年の巨匠風の演奏だと思ったが、そのときも、将来どのような演奏スタイルに結実するかは、つかみかねた。昨日の演奏では、これはバックハウスを意識しているのかな、と思うときがあった。
プロコフィエフの交響曲第3番は、オペラ「炎の天使」を素材とした曲だが、プログラムの解説によれば、プロコフィエフ自身は「炎の天使」による交響曲と呼ばれることを好まなかったそうだ。もっとも、実質は「炎の天使」そのものだ。
「炎の天使」はプロコフィエフの悪魔的(ないしは魔術的)な音楽が全面的にあらわれた作品で、プロコフィエフの本質の一端をついている。そのような音楽が凝縮して構成されているこの交響曲は、今後さらに評価が高まるのではないか――昨日はそう思わせる演奏だった。さすがに過去2回のプロコフィエフの交響曲の演奏で(第1番、第2番、第7番)、オーケストラがその語彙になれてきたように感じた。
このプロジェクトは順調に進んでいる。気がつけば、もう折り返し点だ。私はこのプロジェクトを通してプロコフィエフの面白さを教えてもらった。このプロジェクトは将来にわたって語り継がれるものになるのではないかと思った。
(2009.10.23.サントリーホール)
(1)チャイコフスキー:幻想的序曲「ハムレット」
(2)モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番(ピアノ:田村響)
(3)プロコフィエフ:交響曲第3番
私はチャイコフスキーの「ハムレット」を生できくのは、これが初めてかもしれない。考えてみれば、チャイコフスキーのような人気作曲家でも、演奏会で演奏されている曲はごく一部の曲にかぎられているのだ。
この曲は交響曲第5番と同時期につくられたとのこと。チャイコフスキーが円熟のきわみに達したころの作品で、語り口のうまさが際立っている。オフェーリアをあらわすというオーボエの旋律はロシア情緒をたたえていて、とくに印象的だ。この部分ではラザレフが客席を振り返り、「どうです、この旋律は」というような表情をみせた。
モーツァルトのピアノ協奏曲第27番は、いつものように小編成で流れのよいオーケストラだったが、田村響のピアノは一本調子でニュアンスに乏しいと感じた。本人としては意図してマイペースを守っていたのではないかと思うが、私はだんだん退屈になった。もっとも、音はきれいだったが。
田村響は2007年のロン・ティボー国際コンクールに優勝して話題になった。私もその当時、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番をきいて、往年の巨匠風の演奏だと思ったが、そのときも、将来どのような演奏スタイルに結実するかは、つかみかねた。昨日の演奏では、これはバックハウスを意識しているのかな、と思うときがあった。
プロコフィエフの交響曲第3番は、オペラ「炎の天使」を素材とした曲だが、プログラムの解説によれば、プロコフィエフ自身は「炎の天使」による交響曲と呼ばれることを好まなかったそうだ。もっとも、実質は「炎の天使」そのものだ。
「炎の天使」はプロコフィエフの悪魔的(ないしは魔術的)な音楽が全面的にあらわれた作品で、プロコフィエフの本質の一端をついている。そのような音楽が凝縮して構成されているこの交響曲は、今後さらに評価が高まるのではないか――昨日はそう思わせる演奏だった。さすがに過去2回のプロコフィエフの交響曲の演奏で(第1番、第2番、第7番)、オーケストラがその語彙になれてきたように感じた。
このプロジェクトは順調に進んでいる。気がつけば、もう折り返し点だ。私はこのプロジェクトを通してプロコフィエフの面白さを教えてもらった。このプロジェクトは将来にわたって語り継がれるものになるのではないかと思った。
(2009.10.23.サントリーホール)