Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ひとにぎりの塩

2011年10月11日 | 身辺雑記
 能登半島の先端に位置する珠洲(すず)市。この三連休には、珠洲市の自然、人情、食べ物にどっぷり浸ってきました。羽田空港から能登空港へわずか一時間。そこはまさに別世界でした。

 まず自然では、岩倉山(357メートル)に登ってきました。千枚田で有名な曽々木海岸近くの里山です。山頂からの下山路では廃道に迷い込んでしまって難渋しました。草が生い茂り、枯れ枝に埋もれた道。蛇を踏んでしまうのではないかと冷や冷やでした。

 宿の目の前は日本海。雲が浮かんでいたので夕日は無理かなと思っていたら、雲の隙間から夕日が照らしてきました。海をオレンジ色に染める見事な夕日でした。

 海岸沿いを走ってもらったタクシーの運転手さんは、昔ながらの揚げ浜塩田で塩づくりをしている角花家とは顔見知りのようでした。「ちょっと見て行くかい?」といって、浜辺の塩焼き小屋につかつかと入り、年季の入った釜を見せてくれました。釜の脇には塩が溜まっていました。そこに手を突っ込んで、ひとにぎりの塩を分けてくれました。旨みのある美味しい塩でした。

 揚げ浜塩田は400年の歴史があります。昔、日本海に面したこの一帯はずっと塩田が続いていたそうです。けれども戦後、専売制が導入され、どの家もわずかのお金と引き換えに廃業を余儀なくされました。そのなかで角花家だけは続けました。今では国指定無形文化財に指定されています。

 時代は変わりました。今、揚げ浜塩田が復活しつつあります。手間暇がかかり、重労働で、しかも量産できない製法ですが、その味は食卓塩とは別物です。それがスローフード志向の今の時代に合っているのかもしれません。

 ドキュメンタリー映画もできました。石井かほり監督の「ひとにぎりの塩」です。実はある雑誌でこの映画の紹介記事を見かけたことが、揚げ浜塩田を知ったきっかけです。能登半島に行こうと思ったのもそのときです。旅行の計画中に、映画が完成して、地元で完成披露上映会が開かれることになりました。なんという偶然でしょう。そこで上映会を中心に日程を組みました。

 上映会には石井監督もみえていました。手塩にかけた(!)映画が完成した感激からでしょう、涙で言葉につまっていました。会場に詰めかけた地元の方々は、身近な風物や人々が映っているので、上映のあいだ中、笑いが絶えませんでした。
(2011.10.8.ラポルトすず)
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