Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

シャリーノの音楽

2012年01月18日 | 音楽
 コンポージアム2011「サルヴァトーレ・シャリーノの音楽」。これは昨年5月に予定されていた演奏会だが、原発事故の影響で延期になった。主催者側はスケジュール調整などで大変だったろうが、ともかく無事に開催できてよかった。後述するが、異例の編成の曲をふくむこの演奏会は、普段は実現が難しい。わたしにとっては貴重な経験の機会になった。

 1曲目は「子守歌」(1967)。シャリーノ(1947~)のデビュー作だ。9人の打楽器奏者をふくむ大オーケストラのための曲だが、トゥッティで咆哮することはない。シャリーノ自身が執筆したプログラム・ノートによれば、「70以上のソロ楽器が4つの異なるグループに分かれ、それぞれが休止によって区切られた4つの節を演奏する」。散乱した音たちが途切れ途切れに現れる曲だ。

 2曲目は「声による夜の書」(2009)。3楽章からなるフルート協奏曲だ。フルート独奏はマリオ・カローリ。この奏者を念頭において書かれた。シャリーノの最新作だ。東京のような都会では考えられない漆黒の夜。そこにうごめく物の怪。だが正直にいうと、30分ほどかかる演奏時間中、意識を集中し続けることは難しかった。

 3曲目は「電話の考古学」(2005)。副題は「13楽器のためのコンチェルタンテ」。これは楽しかった。電話回線の混線のノイズが模倣され、それがだんだんひどくなって、最後はピアノのメロディーが混入する。思わずニヤッと笑ってしまった。シャリーノにはこういうユーモアがあるのか。プログラム・ノートによれば、携帯電話に代表される現代生活へのシニカルな見方が曲の背景にあるようだ。

 以上の演奏はマルコ・アンジュス指揮の東京フィル。どの曲も鮮やかな演奏だった。アンジュスはシャリーノのスペシャリストだそうだ。東京フィルもよく準備されていた。

 4曲目は「海の音調への練習曲」(2000)。なんといっても、これが聴きものだった。とにかく編成がすごい。カウンターテナー、フルート四重奏、サクソフォン四重奏、パーカッションのほかに、100本のフルート(!)と100本のサクソフォン(!)。どういう音がするのかと興味津々だ。

 実に面白かった。遠い海鳴りの音から浜辺の泡の音まで――。カウンターテナーのパートはシャリーノのオペラ「わが裏切りの瞳」と同じ様式だが、本作ではアッシジの聖フランチェスコの言葉が歌詞だ。彌勒忠史さん渾身の歌唱だった。
(2012.1.17.東京オペラシティ)
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