Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ヴァンスカ/読響

2012年02月22日 | 音楽
 オスモ・ヴァンスカが客演した読響の2月の各公演は、フィンランドの現代作曲家カレヴィ・アホの作品が組み込まれている。昨日は定期演奏会で、管弦楽曲「ミネア」が演奏された。これはヴァンスカ指揮ミネソタ管弦楽団によって2009年に初演された作品。曲名の「ミネア」とはミネソタ管の本拠地ミネアポリスに由来すると思われる。

 プログラムには作曲者自身の解説が載っていたので、どういう曲かわかりやすい。この曲はヴァンスカから「約100人の大オーケストラのための、16~20分ほどの作品」を書いてほしいと頼まれて書いたそうだ。「彼は、ミネソタ管のメンバー全員が活躍することのできる作品を望んでいたのだ。」

 たしかにそのとおりの曲だ。解説によれば、曲はトランクィッロ(穏やかに)→アレグロ(活発に)→フリオーソ(熱狂的に)→プレスト(急速に)と進行する。なかでも印象に残るのはフリオーソ→プレストの部分だ。各種の打楽器が、複雑な、しかし一定のパルスをもったリズムを打ち続け、オーケストラが断片的な音型をそこに積み重ねて膨れ上がる。「つまり、音楽が終わりに向けて、巨大なアッチェレランドとクレッシェンドを形成するのだ」。

 このリズムにはアラビヤ音楽の語法が用いられているそうだ。そのためかどうか、ある種の呪術的な、もっといえばシャーマニズムの色彩があった。

 この曲は、演奏会冒頭の序曲として、あるいはメイン・プロが終わった後の締めの曲として、効果絶大だ。聴衆が熱狂することはまちがいない――のだが、この日の演奏はお行儀のよさが感じられた。

 カレヴィ・アホといえば、ヴァンスカと読響が2009年に演奏した交響曲第7番「虫の交響曲」が記憶に新しい。あれはカレル・チャペック(ヤナーチェクの「マクロプロス事件」の原作者だ)の戯曲「虫の生活」(兄ヨゼフとの共作)によるオペラの音楽を使った交響曲ということだった。そこで事前に戯曲を読んでいった。すると交響曲の各楽章が戯曲のどの部分を描写しているか、手に取るようにわかった。

 その経験と今回の「ミネア」を聴いた印象からいって、カレヴィ・アホは驚くほど雄弁な(しかし饒舌には陥らない)描写力をもった作曲家のようだ。

 昨日はその後、「ばらの騎士」組曲とブラームスの交響曲第1番が演奏された。いずれもクールな演奏だった。
(2012.2.21.サントリーホール)
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