Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

原田慶太楼/東響

2024年09月01日 | 音楽
 サントリーホールサマーフェスティバル2024が終わり、まだ余韻がさめないうちに、もう在京オーケストラの通常公演が始まった。昨日は原田慶太楼指揮東響の定期演奏会。

 1曲目は上田素生の「儚い記憶は夢となって」。上田素生(うえだ・もとき)という人は1998年生まれという以外にプログラムには何の情報も載っていない。本人の書いたプログラム・ノートが載っているだけだ。とにかく曲を聴いてみよう。三拍子のノスタルジックな音楽が頻出する曲だ。昭和の時代の劇伴音楽のようだ。今の若い世代の中にはこういう音楽を好む人もいるのだろうか。

 2曲目はガーシュウィンのピアノ協奏曲。ピアノ独奏は角野隼斗(すみの・はやと)。その人気のためか、当公演は全席完売だった。客席には女性客が目立つ。目の子では7割くらいが女性ではないか。演奏は音が美しく、スリリングで、たしかに人気の所以が分かるというものだ。一方、オーケストラは、トランペット・ソロなど個々のプレイヤーの妙技はあったが、全体のアンサンブルはもっさりしていた。

 角野隼斗のアンコールがあった。「ムーンリバー」だ。即興的な要素もあったのではないかと思う。美しくて胸にしみる演奏だ。アンコールにポピュラー音楽の「ムーンリバー」を弾くところも(しかもその演奏が人を酔わせることも)人気の所以だろう。

 プログラム後半の3曲目はアルヴォ・ペルトの「主よ、平和を与えたまえ」。合唱は東響コーラス。人数はいつもより多い気がした。そのせいなのかどうなのか、ハーモニーの精度が(いつもより)不足した。それでも初めて聴くこの曲がおもしろかった。波が寄せるような細かいクレッシェンドが付く曲だ。

 3曲目からアタッカで4曲目のプーランクの「グローリア」に入った。ぱっと目の前が明るくなった。バルト海の曇り空から地中海の青空への転換のようだ。第2曲の「私たちはあなたを誉め」では合唱団がリズムに合わせて体を揺すり、聴衆の笑いを誘った。合唱の精度はみるみる高まり、第6曲「父の右に座しておられる方よ」の冒頭のアカペラでは見事なハーモニーを聴かせた。ソプラノ独唱は熊木夕茉(くまき・ゆま)。豊かな声の持ち主だ。柔らかいラインで音楽を縁取る。オーケストラはアンサンブルが引き締まり、プーランク特有の陰影を濃やかに付けた。オーケストラの演奏はこの曲が一番良かった。

 余談だが、プーランク(1899‐1963)とガーシュウィン(1898‐1937)は一歳違いの同世代だ。ガーシュウィンはパリに行ったことがある。ラヴェルやブーランジェには会ったようだが、プーランクには会ったのだろうか。
(2024.8.31.サントリーホール)

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