Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

アルディッティ弦楽四重奏団:室内楽コンサート(2)&(3)

2024年08月26日 | 音楽
 サントリーホールサマーフェスティバル2024。昨日は昼公演がアルディッティ弦楽四重奏団の室内楽コンサート(2)、夜公演が同(3)だった。

 室内楽コンサート(2)は、1曲目がエリオット・カーター(1908‐2012)の弦楽四重奏曲第5番。単一楽章の曲だが、内容は細かく分かれる。結果、頻繁にテンポが変わる。それを一気に聴かせる。聴かせ上手だ。ヴィオラが目立つ場面が何度もある。弦楽四重奏のヒエラルキーを破り、4人の奏者が対等に書かれている。

 2曲目は坂田直樹(1981‐)の新作「無限の河」。尺八の音の組成と演奏法を参照した曲だそうだが、わたしは単調に感じた。演奏のせいだろうか。3曲目は西村朗(1953‐2023)の弦楽四重奏曲第5番「シェーシャ」。坂田直樹の前曲とは対照的に変化に富み、ドラマがある。西村朗の資質はオペラ向きだったかもしれない。「紫苑物語」の台本が優れていたら、どんなオペラになったか。

 4曲目はハリソン・バートウイッスル(1934‐2022)の弦楽四重奏曲「弦の木」。各楽器がよく鳴る。そしてリズムが分かりやすい。最後に仕掛けがある。各奏者の後ろに椅子が用意されていて、一人また一人と後ろの椅子に移る。弦楽四重奏の解体のようだ。その後、一人ずつ演奏を終えてステージを去る。物語の終わりか。

 次に室内楽コンサート(3)。1曲目はブライアン・ファーニホウ(1943‐)の弦楽四重奏曲第3番。2曲目はジェームズ・クラーク(1957‐)の弦楽四重奏曲第5番。二人は「新しい複雑性」と呼ばれる作曲家だが、当日の作品は対照的だった。ファーニホウの曲は複雑なパッセージが猛スピードで疾走する。一方、クラークの曲は、アルディッティが書いたプログラムノーツによれば「凍りついた時間」だ。わたしはクラークの曲が面白かった。

 3曲目はロジャー・レイノルズ(1934‐)の「アリアドネの糸」。弦楽四重奏に加えて、コンピュータ生成の音響が入る。その音響がだんだん高まり、ついには弦楽四重奏を威嚇するまでになる。緊張の頂点で、テセウスが迷宮から出たかのように、音響は消える。

 4曲目はイルダ・パレデス(1957‐)のピアノ五重奏曲「ソブレ・ディアロゴス・アポクリフォス」。新作だ。ピアノ独奏は北村朋幹。断片的な音が跳躍する。ピアノは内部奏法を多用する。この曲はひょっとするとユーモラスな曲ではないかと。もっとも演奏にはあまりユーモアを感じなかったが。5曲目はクセナキス(1922‐2001)の「テトラス」。超絶技巧の曲だが、ファーニホウの曲は各奏者の超絶技巧であるのに対して、クセナキスの曲は弦楽四重奏の超絶技巧だ。演奏は見事の一語に尽きる。
(2024.8.25.サントリーホール小ホール)

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