Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ラ・フォル・ジュルネ(2)

2012年05月06日 | 音楽
 その日、15:00からはヤーン=エイク・トゥルヴェ指揮、ヴォックス・クラマンティスのコンサートを聴いた。アルヴォ・ペルトの「カノン・ポカヤネン」が目玉だ。目玉も目玉、超目玉だ。ペルトの代表作の一つといってもよいのではないか。CDが出ているので、聴いたことはあるが、生で聴けるとは思ってもいなかった。スケジュール表でこの曲を見たときには、我が目を疑った。

 ヴォックス・クラマンティスの演奏は、完璧そのもの、驚異的だった。ア・カペラで歌われるその音程は揺るぎなく、ハーモニーは透明で、話し言葉のように変幻自在なリズムは正確だ。この日の演奏は、全体で約90分かかるこの大作の、半分ほどの抜粋だった。それでも、この曲の真髄に触れた、と思える手応えがあった。ペルトの静謐で、一見シンプルと思われるその音楽が、実は巧緻をきわめた技巧からなっていることが感じられた。

 ペルトの前に、クレークの「夜の典礼」とロシア正教のズナメニ聖歌が演奏された。キリルス・クレーク(1889ー1962)という作曲家は知らなかった。ペルトと同じくエストニアの作曲家だ。CDを調べたら、「レクイエム」が出ていた。さっそく取り寄せてみた。荘厳な宗教音楽というよりも、素朴な民族音楽のような温かさがある。フィンランドの民族音楽にも似た感触だ。「夜の典礼」も同様だった。

 18:15からは「ボリス・ゴドゥノフ宮廷の音楽」を聴いた。マリア・ケオハネのソプラノ独唱、リチェルカーレ・コンソートの演奏。ボリス・ゴドゥノフというと、ムソルグスキーのオペラを思い出すが、要するに実在の人物ボリス・ゴドゥノフの宮廷で演奏された音楽というわけだ。内容はイギリスのルネサンス音楽。いずれも小品だが、率直かつ簡明な愛の訴えに押された。

 19:30からは、ラフマニノフの「晩祷」を演奏したカペラ・サンクトペテルブルクの再登場で、スヴィリドフ、ガヴリーリンそしてロシア民謡のコンサート。「晩祷」では粗さを感じたが、今度は見違えるような一流のアンサンブルだった。ホールCだったので、その効果もあった。残響がないB7では苦しい。

 スヴィリドフ(1915ー1998)はショスタコーヴィチの高弟だ。ショスタコーヴィチの評伝を読むと、ところどころにその名が出てくる。ショスタコーヴィチを終生敬愛した。ショスタコーヴィチもこの弟子を信頼した。その作品には師譲りの明晰さが感じられた。ガヴリーリン(1939ー1999)はまったく未知の作曲家だ。面白かった。ロシア民謡の数々では、この合唱団のエンタテインメント性を楽しんだ。
(2012.5.4.東京国際フォーラムB5&よみうりホール&C)
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