Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

広上淳一/N響

2012年05月20日 | 音楽
 広上淳一/N響の定期。広上さんも数々の修羅場(?)をくぐって、今や百戦錬磨のつわものになった。N響の定期を振っても堂々としたものだ。プログラムにも主張があって個性的だ。

 1曲目は武満徹の「フロム・ミー・フローズ・ホワット・ユー・コール・タイム」。武満徹の晩年の作品だ。5人の打楽器奏者のための協奏曲。昨年の佐渡裕のベルリン・フィル・デビューで取り上げられた。CDが出ているので聴いてみた。カール・セント・クレア指揮パシフィック交響楽団、打楽器アンサンブル「ネクサス」の演奏だ。これはすばらしいと思った。約30分の比較的長い曲だが、まったく飽きさせない。武満徹の、静謐ななかの雄弁さに舌を巻く曲だ。

 実際に聴いてみて、CDの印象とは多少ちがう点もあった。ひとつはオーケストラのテクスチュアが薄いと感じたことだ。CDでは感じなかった。これはNHKホールの特性からくるのかもしれない。この作品が初演されたカーネギーホールではもう少しちがう鳴り方がしたのではないだろうか。

 ポジティヴな面では、打楽器奏者の掛け合い(とくに終盤の第2奏者と第3奏者の掛け合い)が、気迫のこもったものだったことだ。ここはカデンツァに相当する部分だが、譜面はどの程度書かれているのだろう、逆に即興的な要素はどの程度あるのだろう、と思った。

 5人の打楽器奏者は、3人がN響、1人が読響、1人がシエナ・ウィンド・オーケストラという構成。繊細さを失わない演奏で、なんの文句もない。

 休憩をはさんで、2曲目はバーバーの「弦楽のためのアダージョ」。この曲を聴くのは何年ぶりだろうか。やはり名曲だと思った。演奏もすばらしかった。16型の大編成だが、ピンと張りつめた糸のような緊張感が保たれていた。クライマックスに向けての感情の高まりの部分は、指揮者の棒のもとに一体となった演奏だった。

 3曲目はバーンスタインの交響曲第1番「エレミア」。バーンスタイン24歳のときの作曲コンクール応募作(ただし落選!)。若書きとはいうものの、その後のバーンスタインの軌跡を考えると、そこにこめられた意欲に惹かれる曲だ。演奏も立派だった。きちんと構築された格調高い演奏だった。気合が入っていた。メゾ・ソプラノ独唱はラヘル・フレンケル。イスラエルの若手だそうだ。イスラエルの人々にとって大事であろうこの曲を、心をこめて歌っていた。
(2012.5.19.NHKホール)
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