Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番~第3番

2012年05月01日 | 音楽
 ゴールデンウィークの前半はあっという間に終わってしまった。真ん中に法事が入ったので、その前後も出かける気になれず、家でじっとしていた。家にいると結局はCDを聴いている。そのなかで面白かったCDがある。アルテュール・スホーンデルヴルトARTHUR SCHOONDERWOERDという人のフォルテピアノ独奏と指揮、アンサンブル・クリストフォリ演奏のベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番~第3番だ。

 なんといってもオーケストラ編成がユニークだ。木管・金管は二管編成だが、弦楽器が基本的には各1人(ヴィオラは2人)。これでどういう音がするかというと、たとえば第1番の冒頭の、弦楽器による第一主題の提示が、室内楽的に聴こえる。木管・金管・ティンパニが入ってくると、堂々としたオーケストラの音になる。以降、どこをとっても、弦楽器の音を追っていると室内楽のように聴こえる。木管・金管・ティンパニを加えた総体として聴いていると、オーケストラの音と感じられる。

 ベートーヴェンはこれらの協奏曲をロブコヴィツ邸の広間(おそらくエロイカが初演された場所だろう)で試演した。そのときの編成がこうだったという。ベートーヴェンはなんの不足も感じなかった。大きなホールで弦楽器の数を倍にするときは、管楽器の数も倍にしたそうだ。

 軽いショックだったのは、CDの解説書で第2番の出版譜の表紙を見たときだ。そこにはこう書いてあった。「ピアノフォルテのための協奏曲。二つのヴァイオリン、ヴィオール、チェロとバス、フルート、2本のオーボエ、2本のホルン、2本のファゴットを添えて」。

 本数の指定がない楽器は、単数形で書かれている。ただしヴィオールはヴィオラの複数形と類推される。第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンは各1本、ヴィオラは複数(2本)、チェロとコントラバスは各1本というわけだ。

 この編成だと、弦楽器は今のような優位性を失い、管楽器(とくに木管)と同等になる。さらにいえば独奏楽器のフォルテピアノも、トゥッティの部分では通奏低音を担当するので、オーケストラの一員になる。今の、オーケストラと対峙するイメージとは、まったく異なる。これはコペルニクス的転回だ。

 当時は、フォルテピアノは聴衆側かオーケストラ側と向き合い、弦楽器はその周りに半円を描いて配置され、管楽器はその後方に同じく半円状に(ときにはひな壇を置いてその上に)配置されたそうだ。これも当時のオーケストラのありようを彷彿とさせる。
コメント (6)
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