Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

カンブルラン/読響

2014年04月18日 | 音楽
 カンブルラン指揮の読響。1曲目は珍しいシェーンベルクの「弦楽のためのワルツ」。弦楽合奏のための10曲の短いワルツだ。プログラム・ノーツによれば、若き日のシェーンベルクがアマチュア音楽団体のために書いた曲。作品番号が付く前の曲だ。

 これが意外に面白かった。演奏がよかったからだと思う。カンブルランがわざわざこの曲を取り上げた目的意識が明確だったのだろう。もし漠然と演奏したら、こんなに面白く聴けたかどうか。

 ウィンナ・ワルツ風の甘さがまったくない曲だ。ウィンナ・ワルツのように風土に根ざした曲ではなく、頭で作った曲、という感じ。たとえていえば、屋台の灯りのような人工的な光を透かして見る懐かしい映画のような感じだった。

 2曲目はリストのピアノ協奏曲第1番。いつの頃からか、この曲を聴く意味を失ってしまったと、今更のように思った。でも、演奏は面白かった。ソリストのニコライ・デミジェンコは硬質な――結晶のように美しい――音だった。カンブルランの指揮も、この曲にありがちな膨張した音ではなく、引き締まった音だった。この曲でこういう演奏を聴くのは初めてだと思った。

 アンコールが演奏された。音が密集して渦巻くような曲。リストかと思ったが、リストにしては暗いと思った。ロビーの掲示を見たら、メトネルの「おとぎ話」という曲。メトネル(1880‐1951)の名前は知っていたが、曲を聴くのは初めてだった。

 3曲目はマーラーの交響曲第4番。第1楽章の冒頭、フルートと鈴による序奏の後、第1ヴァイオリンが第1主題を提示するが、それが薄く透明な音で、しかも弾むようなアクセントが付けられていた。その快さは、春の微風のなかをツバメがすいすい飛んでいくような感触だった。

 第2楽章が一番面白かった。第1ホルンがオブリガート・ホルンのように鳴り響き、コンサートマスターのソロと拮抗していた。また、両者ともアクセントが所々強調されたり、チェロのスラーが強調されたりと、目まぐるしく変化し続けた。

 第3楽章はわたしのお気に入りだが、こんなに甘美さから遠い演奏は聴いたことがない。少々戸惑った。第4楽章のソプラノ・ソロはローラ・エイキン。エイキンとカンブルランと役者が揃ったのに、曲がマーラーとは、正直、物足りなかった。もっと他の曲がありそうなものだが。今シーズンの読響のプログラムは概して保守化が目立つ。
(2014.4.17.サントリーホール)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする