Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

山田和樹/日本フィル

2014年09月13日 | 音楽
 山田和樹指揮の日本フィル。今週はヤクブ・フルシャ、下野竜也と立て続けによい指揮者を聴いたが、山田和樹も負けず劣らず(というか、ひょっとすると、もっと)よい指揮者だと感じ入った。

 1曲目はリヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」から「ワルツ第1番」。じつは会場に行くまでは「ばらの騎士」組曲だと思っていた。山田和樹のプレトークで初めて「ワルツ第1番」という曲だとわかった。そういう曲があるのか――。「ばらの騎士」組曲とくらべて渋いというか、媚びたところがない。広瀬大介氏のプログラムノートによれば、オットー・ジンガーという人の編曲だが、(とくに終結部には)シュトラウス自身の手がずいぶん入っているそうだ。たしかにオペラでは聴いたことのない音の動きがあった。

 2曲目はシェーンベルクの「浄められた夜」。わたしは知らなかったが、この曲の弦楽合奏版には1917年版と1943年版があるそうだ。シェーンベルク自身は1943年版について「オリジナルの弦楽六重奏へのバランスに戻すことを重視した」と語ったそうだ(プログラムノート)。当夜はその1943年版による演奏。

 ヴァイオリン12+10、ヴィオラ6+6、チェロ6+4、コントラバス6という大編成。緊張感のある、シャープな演奏だった。名演だった。この曲が内包する微細なドラマをすべて的確に描き出した。

 この曲については、かねてから気になっていることがあるので、一夜明けた今日、ちょっと調べてみた。

 シェーンベルクがこの曲を書いたのは1899年11月~12月(プログラムノート)。では、ツェムリンスキーの妹マティルデと結婚したのはいつだったろう。調べたら、1901年10月だった。でも、その前に婚約期間があるようだ。婚約したのはいつだったのだろう。

 わたしの妄想は、この曲の作曲時期と婚約時期とが、重なっているのではないだろうか、ということだ。マティルデは結婚後の1908年、若い画家のゲルストルと駆け落ち騒動を起こしたが、婚約前にもなにかあったのでは――。

 3曲目はリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・キホーテ」。これも名演だった。独奏チェロ(菊地知也)とヴィオラ(パウリーネ・ザクセ)がオーケストラのなかに組み込まれ、絶妙のバランスを保っていた。このバランスのよさ、音のコントロール能力の高さが、山田和樹の魅力だ。
(2014.9.12.サントリーホール)
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