Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

メッツマッハー/新日本フィル

2014年09月30日 | 音楽
 メッツマッハー/新日本フィルがツィンマーマンとベートーヴェンを組み合わせた極めて意欲的な演奏会を継続している。昨日の定期もその一環。

 1曲目は「フォトプトシス」。大オーケストラのためのプレリュードという副題が付いている。文字通り、大オーケストラが巨大な波のようにうねる。向井大策氏のプログラムノーツには「四分音をふくむ不協和な音響の運動」と解説されている。その音響が驚くほど見通しよく聴こえる。四分音を聴いていると、時々、船酔いしたような気分になることがあるが、この演奏ではそれがなかった。

 途中、ベートーヴェンの「第九」(第4楽章の冒頭の音型)が引用され、それに続いて他の音楽も引用される。ものすごく面白い。でも、その引用の意味は?と考えると、そう簡単には答えが出ない。でも、面白い。

 2曲目は「ユビュ王の晩餐のための音楽」。以前、大野和士が同じく新日本フィルを振って演奏したことがあるが、残念ながら聴き逃した。まさかこんなに早く聴く機会が訪れるとは思っていなかった。絶好のチャンスだ。

 大編成のオーケストラだが、弦はコントラバス4本だけ。ヴァイオリンもヴィオラもチェロも欠く。その代わり、多数の打楽器とジャズ・コンボが加わる。木管・金管は基本的に3管編成。こういった特殊編成のオーケストラが、原色の色彩で、かつ、はっきりした発音で、鮮烈な演奏を繰り広げた。

 メッツマッハーは、ツィンマーマンの演奏では、今、世界最高峰の一人だろうという思いを強くした。そういう指揮者を日本に居ながらにして聴くことができるとは、なんと幸運なことか。

 なお、「ユビュ王……」では日本語の語りが入った。このことは事前に告知されていたので、スコアにツィンマーマンが書き込んだというシュトックハウゼンにたいする悪態が読み上げられるのだろうと期待していた。そうしたら、今回のための書き下ろしだった。筆者の人生観かもしれないが、狂騒的なこの作品とはなんの関係もなかった。

 3曲目はベートーヴェンの交響曲第7番。一言でいって、すさまじいテンションの高さに貫かれた演奏。技術論よりも何よりも、メッツマッハーが自らの生命力のすべてを注ぎ込み、オーケストラもそれを受け止めた演奏だ。メッツマッハーがハーディングとともに臨んだ記者会見で語ったことが(※)、驚くべきレベルで実行されていると感じる。
(2014.9.29.サントリーホール)

(※)飯尾洋一氏のブログ(2013年9月14日の記事を参照)
http://www.classicajapan.com/wn/2013/09/
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