Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

広上淳一/日本フィル

2015年07月11日 | 音楽
 広上淳一指揮の日本フィルの定期。プログラムはエルガーのヴァイオリン協奏曲とメンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」。地味なプログラムなので、お客さんの入りはどうかと思ったが、意外によく入っていた。

 まずエルガーのヴァイオリン協奏曲。チェロ協奏曲に比べて、ヴァイオリン協奏曲はあまり聴く機会がない。わたし自身いつ聴いたか、ちょっと想い出せない。でも、名曲だ。交響曲第1番と第2番のあいだに書かれた曲。エルガーの創作力がピークを迎えていた時期だ。枯淡の境地のチェロ協奏曲とは性格が異なる。

 ヴァイオリン独奏はダニエル・ホープ。さすがに名手だ。この曲をすっかり手のうちに収めている。とくに第3楽章後半の長大なカデンツァ――この曲の最大の聴きどころだ――での音楽への沈潜に息を呑んだ。

 オーケストラは――正直にいうと――聴いているうちに、単調さを感じるようになった。もう少し芸があってもよかった。思い返すと、四角四面のところがあったような気がする。

 演奏時間約50分の大曲だ。アンコールはないだろうと思ったら、アルペッジョの速いパッセージが続く曲が演奏された。面白い! 帰りがけに掲示板を見たら、ヴェストホフの「鐘の模倣」と書いてあった。??

 帰宅後調べてみたら、ヨハン・パウル・フォン・ヴェストホフJohann Paul von Westhoff(1656‐1705)という人のヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調の第3楽章「鐘の模倣」だった。未知の作曲家を教えてもらった。これも演奏会の楽しみの一つだ。なお、原曲では通奏低音が付くが、今回は無伴奏ヴァイオリンで演奏していた。

 プログラム後半はメンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」。前曲の淡々としたオーケストラ伴奏とは異なり、大小さまざまな仕掛けが仕込まれていた。まさに息つく暇もない演奏。広上淳一を聴く面白さがよく表れた演奏だった。

 広上淳一は1990年10月の日本フィル定期でもこの曲を振った。わたしも聴いた。細かいことは覚えていないが、でも、溌剌とした、瑞々しい感性の若者の登場だと思った。歓呼の拍手を送った。広上淳一はその2年前の1988年12月の日本フィル定期にも登場して、マーラーの交響曲第6番を振ったはずだが、仕事の都合で行けなかった。メンデルスゾーンのこの曲が広上淳一との初めての出会いだった。
(2015.7.10.サントリーホール)
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