今年の夏も終わろうとしている。誰しも今年の夏はどうだったろうと、漠然と考える頃だと思う。わたしの場合はどうだったろう‥。
直近の出来事としては、サントリーのサマーフェスティヴァル2016があった。わたしが嬉しかったことは、「ザ・プロデューサー・シリーズ」に佐藤紀雄/アンサンブル・ノマドと板倉康明/東京シンフォニエッタが取り上げられたことだ。両者とも長年にわたり地道に現代の音楽を演奏してきた団体。そこにスポットライトが当たったことは、本当によかったと思う。
わたしは佐藤紀雄/アンサンブル・ノマドのほうを聴いたが、さすがに名手揃いだけあって、その演奏は見事だった。第2夜では演奏会終了後、鳴り止まない拍手に応えて、佐藤紀雄がソロ・カーテンコールに現れた。佐藤紀雄が長年続けてきた努力への心温まる拍手だった。
私事になるが、わたしは佐藤紀雄と同い年だ。なので、なおさら、その人生の歩みが感じられるような気がして、嬉しかった。
また7月の終わりには、ジェイムズ・ジョイスの「フィネガンズ・ウェイク」や「ユリシーズ」の翻訳などで知られる柳瀬尚紀(以下「柳瀬先生」と呼ばせてもらう)が亡くなった。わたしは大学時代に柳瀬先生のゼミを取った。先生は学部の先輩だった。学生の間では「ものすごく優秀だったらしい」と噂されていた。ゼミではサミュエル・ベケットの戯曲「ゴドーを待ちながら」を読んだ。学生に訳させて感想をいわせる講義だった。
学年末にレポートの提出があった。わたしは(どんな事情があったのか)期日に間に合わなくなった。切羽詰って先生のご自宅に電話をした。「今晩書きますから、明日まで待ってもらえないでしょうか」とお尋ねしたら、「では、学部の事務室には出さずに、僕の家の郵便受けに入れておくように。僕は夜、仕事をしているので、朝は寝ているから、呼び鈴は押さないように」とのことだった。
後日談になるが、そのレポートにはAの評価をいただいた。先生、ありがとうございました。ご冥福をお祈りします。
閑話休題。今夏、山は北八ヶ岳に登った。小雨が降る中、双子池ヒュッテの近くまで来ると、周囲の木という木に、白い糸のような植物が垂れ下がっているのを見た。濃霧の中に突如浮き上がった幻想的な森の光景。まるで童話の世界にいるようだった。ヒュッテの人に聞いたら、ナガサルオガセ(※)という植物だと教えてもらった。
(※)ナガサルオガセ
直近の出来事としては、サントリーのサマーフェスティヴァル2016があった。わたしが嬉しかったことは、「ザ・プロデューサー・シリーズ」に佐藤紀雄/アンサンブル・ノマドと板倉康明/東京シンフォニエッタが取り上げられたことだ。両者とも長年にわたり地道に現代の音楽を演奏してきた団体。そこにスポットライトが当たったことは、本当によかったと思う。
わたしは佐藤紀雄/アンサンブル・ノマドのほうを聴いたが、さすがに名手揃いだけあって、その演奏は見事だった。第2夜では演奏会終了後、鳴り止まない拍手に応えて、佐藤紀雄がソロ・カーテンコールに現れた。佐藤紀雄が長年続けてきた努力への心温まる拍手だった。
私事になるが、わたしは佐藤紀雄と同い年だ。なので、なおさら、その人生の歩みが感じられるような気がして、嬉しかった。
また7月の終わりには、ジェイムズ・ジョイスの「フィネガンズ・ウェイク」や「ユリシーズ」の翻訳などで知られる柳瀬尚紀(以下「柳瀬先生」と呼ばせてもらう)が亡くなった。わたしは大学時代に柳瀬先生のゼミを取った。先生は学部の先輩だった。学生の間では「ものすごく優秀だったらしい」と噂されていた。ゼミではサミュエル・ベケットの戯曲「ゴドーを待ちながら」を読んだ。学生に訳させて感想をいわせる講義だった。
学年末にレポートの提出があった。わたしは(どんな事情があったのか)期日に間に合わなくなった。切羽詰って先生のご自宅に電話をした。「今晩書きますから、明日まで待ってもらえないでしょうか」とお尋ねしたら、「では、学部の事務室には出さずに、僕の家の郵便受けに入れておくように。僕は夜、仕事をしているので、朝は寝ているから、呼び鈴は押さないように」とのことだった。
後日談になるが、そのレポートにはAの評価をいただいた。先生、ありがとうございました。ご冥福をお祈りします。
閑話休題。今夏、山は北八ヶ岳に登った。小雨が降る中、双子池ヒュッテの近くまで来ると、周囲の木という木に、白い糸のような植物が垂れ下がっているのを見た。濃霧の中に突如浮き上がった幻想的な森の光景。まるで童話の世界にいるようだった。ヒュッテの人に聞いたら、ナガサルオガセ(※)という植物だと教えてもらった。
(※)ナガサルオガセ