「ファウストの劫罰」と「エリア」を梯子した。声楽付きの大曲2曲。疲れそうだなと思ったが、意外にそうでもなかった。
まず初台の東京オペラシティで、高関健/東京シティ・フィルのベルリオーズの「ファウストの劫罰」。同フィルの第300回記念定期。今月のスダーン/東響も同じプログラムを組んでいる。高関健のプレトークによると「競演のようになってしまいましたが、偶然です」とのこと。
オーケストラがよく準備された演奏をしていた。高関健の指導力の賜物だと思う。第2部のアウエルバッハの酒場の場面ではもっと弾けてほしかったし、その後の精霊たちの場面では音楽がもたれてしまったと思うが、そういったことよりも、各場面の性格を明確にし、それに相応しいオーケストラの音を整えた高関健の努力を多としたい。
独唱陣ではファウストの西村悟の伸びのある滑らかな声がよかった。フランス語の発音もきれい。ヴェローナ在住とのこと。新国立劇場の「夜叉ケ池」に出演したそうだが、わたしが観た日とは別の日だったようだ。メフィストフェレスの福島明也は手馴れたもの。マルグリットの林美智子にはもう少し感情移入がほしかった。
合唱の東京シティ・フィル・コーアも頑張っていた。各パートの人数のバランスがよいのは、事前に選抜しているからだろうか。アマチュアだからという甘えが感じられなかったことは嬉しい。
個人的な発見だが、第4部でファウストがメフィストフェレスとの契約書にサインする場面では、オーケストラが沈黙する中、タムタムとバスドラムが最弱音で「ドン」と叩くことに気付いた。その音の衝撃に震えた。嬉しい発見だった。
終演後、横浜みなとみらいホールへ。大井剛史/日本フィルでメンデルスゾーンのオラトリオ「エリア」。日本フィル創立60周年記念プロ。
エリアの甲斐栄次郎とオバディヤの望月哲也のコンビは、日本勢としては(現時点で)最強のコンビだと思う。期待どおりの出来だった。ソプラノは半田美和子。いつもながら、芯の強い、意思のはっきりした歌を聴かせてくれた(わたしは以前から注目している)。アルトは手嶋眞佐子。出だしは不安定に感じたが、途中から持ち直した。
大井剛史は真面目な音楽づくり。大人数の日本フィルハーモニー協会合唱団を率いてこの大曲をまとめ上げた功績は大きいと思う。
(2016.9.10.東京オペラシティ&横浜みなとみらい)
まず初台の東京オペラシティで、高関健/東京シティ・フィルのベルリオーズの「ファウストの劫罰」。同フィルの第300回記念定期。今月のスダーン/東響も同じプログラムを組んでいる。高関健のプレトークによると「競演のようになってしまいましたが、偶然です」とのこと。
オーケストラがよく準備された演奏をしていた。高関健の指導力の賜物だと思う。第2部のアウエルバッハの酒場の場面ではもっと弾けてほしかったし、その後の精霊たちの場面では音楽がもたれてしまったと思うが、そういったことよりも、各場面の性格を明確にし、それに相応しいオーケストラの音を整えた高関健の努力を多としたい。
独唱陣ではファウストの西村悟の伸びのある滑らかな声がよかった。フランス語の発音もきれい。ヴェローナ在住とのこと。新国立劇場の「夜叉ケ池」に出演したそうだが、わたしが観た日とは別の日だったようだ。メフィストフェレスの福島明也は手馴れたもの。マルグリットの林美智子にはもう少し感情移入がほしかった。
合唱の東京シティ・フィル・コーアも頑張っていた。各パートの人数のバランスがよいのは、事前に選抜しているからだろうか。アマチュアだからという甘えが感じられなかったことは嬉しい。
個人的な発見だが、第4部でファウストがメフィストフェレスとの契約書にサインする場面では、オーケストラが沈黙する中、タムタムとバスドラムが最弱音で「ドン」と叩くことに気付いた。その音の衝撃に震えた。嬉しい発見だった。
終演後、横浜みなとみらいホールへ。大井剛史/日本フィルでメンデルスゾーンのオラトリオ「エリア」。日本フィル創立60周年記念プロ。
エリアの甲斐栄次郎とオバディヤの望月哲也のコンビは、日本勢としては(現時点で)最強のコンビだと思う。期待どおりの出来だった。ソプラノは半田美和子。いつもながら、芯の強い、意思のはっきりした歌を聴かせてくれた(わたしは以前から注目している)。アルトは手嶋眞佐子。出だしは不安定に感じたが、途中から持ち直した。
大井剛史は真面目な音楽づくり。大人数の日本フィルハーモニー協会合唱団を率いてこの大曲をまとめ上げた功績は大きいと思う。
(2016.9.10.東京オペラシティ&横浜みなとみらい)