Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ジンマン/N響

2016年11月21日 | 音楽
 デーヴィッド・ジンマンのN響への客演は今回で3度目。2009年1月と2013年1月のときの印象が芳しくないのに比べて(もっとも、2009年1月にショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番を弾いたリサ・バティアシュヴィリに驚嘆したことは、今でも忘れられないが)、今回は好調そうに見えた。

 今回はオール・シューマン・プロ。会場に入ると、指揮台に椅子が置いてあるので、衰えているのではないかと心配したが(ジンマンは今年80歳)、舞台の袖から出てくる足取りはしっかりしていた。とりあえず安堵した。

 1曲目は「マンフレッド」序曲。椅子に浅く腰をかけ、指揮棒を振り始めると、その動きは鋭く、敏捷だった。テンポも遅くない。時折立ってオーケストラを鼓舞する。これなら大丈夫だと思った。

 2曲目はピアノ協奏曲。ピアノ独奏はレイフ・オヴェ・アンスネス。スーツを着てネクタイを締めたすらっとした姿は、ピアニストというよりも、ビジネスマンのようだ。写真で見る精悍なイメージとは違っていた。演奏は一音一音がはっきりした輪郭を持ち、無理なく響き渡る。NHKホールの大空間にひけをとらない。

 オーケストラも同様だった。明快に発音されるフレーズ。曖昧さがまったくない。優秀なピアニストと相俟って、正調というか、正統的というか、ともかく折り目正しい、音楽的な聡明さを感じさせる演奏が展開された。

 わたしは正直にいうと、この曲と(あえて言えば)ベートーヴェンの交響曲第7番とは、何十年も聴いてきたからだろうが、今では不感症のようになってしまって、よい演奏だとか、面白い演奏だとか、そう思うことはあっても、(情けないことに)真に感動することが難しくなっているのだが、今回はそんなわたしの感性にも触れた。

 アンコールにシベリウスの「ロマンス」作品24‐9が演奏された。シベリウスというと北欧情緒を連想するが、これはサロン的な音楽のように聴こえた。シベリウスは社交好きだったといわれるので、そういう一面が表われた曲かもしれない。

 3曲目は交響曲第3番「ライン」。ピアノ協奏曲と同様に、すべての音がはっきりと発音され、もごもごと口ごもらない演奏。陰に隠れがちな音も明瞭に聴こえる。リズムがきびきびしていて、テンポもよい。ジンマンという指揮者の優秀さがよく分かるとともに、N響も優秀だと思った。
(2016.11.20.NHKホール)
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