Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

B→Cシリーズ浜野与志男

2017年02月22日 | 音楽
 今回のB→Cシリーズはピアニストの浜野与志男が登場し、ソヴィエト時代を生きて今も存命中の作曲家、ペルト、シチェドリン、シルヴェストロフ、グバイドゥーリナをプログラムに組んだ。

 浜野与志男は1989年生まれ。東京藝大、英国王立音楽大学を経て、今はモスクワでエリソ・ヴィルスラーゼのもとで研鑽中。国内外のコンクールで入賞または優勝を果たしている。母親はロシア人。

 ソヴィエト時代を生きた作曲家を取り上げたのはなぜか。浜野与志男がプログラムに寄せた一文を引用すると、「ソヴィエトの作曲家が残した音楽には圧倒的な感動があり「芸術は死んでいなかった」という実感を与えてくれる」から。

 今回演奏された上記4人の曲は、いずれもソヴィエト時代に書かれたもの。それぞれ異なる作風ながら、鮮烈な個性や濃い内実を備えていて、わたしも「芸術は死んでいなかった」と実感した。言い換えるなら、今まであまり意識してこなかった時代=地域に目を向けるきっかけになった。

 1曲目はバッハの「フランス風序曲」。いきなり大曲だ。序曲とはいっても、今のわたしたちが考えるような序曲ではなく、むしろ組曲だが、最初の「序曲」と最後の「エコー」では演奏のイメージがだいぶ違った。「序曲」ではリヒテルとかニコライエワを思い起こさせる渋いものを感じたが、「エコー」では強い打鍵が表に出た。

 2曲目のペルトの小品「アリーナのために」から3曲目のスカルラッティの「ソナタロ短調K27」へは切れ目なく演奏された。その効果は抜群だった。ペルトの静謐な音楽とスカルラッティの軽やかなバロック音楽とが自然につながり、しかもその対照が見事だった。

 4曲目はシチェドリンの「バレエ音楽〈アンナ・カレーニナ〉からの2つの小品」(ピアノ編曲はプレトニョフ)、5曲目は網守将平の「M7ATION/Ver.13」が演奏された。

 6曲目はシルヴェストロフの「ピアノ・ソナタ第3番」。シルヴェストロフは今秋来日が予定されている。話題になるかもしれない。7曲目はグバイドゥーリナの「シャコンヌ」。張り詰めた厳しさが圧倒的だった。浜野与志男は暗譜で演奏。打鍵の強さが際立った。

 アンコールに活きのいい曲が演奏された。パーヴォ・ヤルヴィがN響でよく取り上げる作曲家エルッキ=スヴェン・トゥールの「ピアノ・ソナタ」から第3楽章だった。
(2017.2.21.東京オペラシティリサイタルホール)
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