7月4日に予定されていたイェルク・ヴィトマン(1973‐)のオラトリオ「箱舟」(2017)の日本初演は、コロナ禍のために中止になったが、どんな曲なのか、気になるので、ナクソス・ミュージックライブラリー(以下「NML」)で聴いてみた。ハンブルクでの世界初演の録音。ケント・ナガノ指揮ハンブルク・フィル、(以下、名前は省略するが)ソプラノ独唱、バリトン独唱、ボーイソプラノ独唱、混声合唱、児童合唱および語り2名(少年と少女)の編成(同音源はユーチューブにもアップされている)。
全5部からなり、演奏時間は約100分。演奏時間といい、上記の編成といい、とてつもない大曲だ。歌詞は、旧約聖書、新約聖書、ミサ典礼文、「子どもの魔法の角笛」、その他12人の詩人・哲学者・作家などの言葉による。NMLに収められたブックレットには歌詞が載っていない。音を聴いただけでは、50%の理解にとどまるのが残念だ。今回の公演(ケント・ナガノ指揮N響その他)は中止になったが、公演用に対訳が用意されていたなら、その対訳が日の目を見ないのは惜しい。
どんな音楽か。第1部「ヒカリアレ/光あれ」(原題はカタカナ部分がラテン語、漢字とひらがな部分がドイツ語)を例にとると、冒頭は無音の中から、打楽器の擦音がかすかに聴こえ、やがて子どもが「創世記」を語り始める。楽器の数が増し、合唱が加わり、「光あれ!」のピークを形成する。荘厳な瞬間だ。その直後に(こういっては何だが)場違いなワルツがバリトン独唱で始まる。さらにバリトン独唱は抒情的な歌曲を歌う。もう何が何だがわからない。最後は合唱の穏やかなコラールで終わる。
第1部の演奏時間は約18分。普通なら約18分は長いが、それを長いと感じない。次から次へと音楽が変わるからだろう。その音楽は、多様式というよりも、多様式という「様式」をこえた「何でもあり」の音楽のように感じる。
以下、簡略に記すと、第2部「洪水」はカオスの世界。最後に心安らぐバリトン独唱となる。第3部「愛」は男女の世俗的な愛憎劇。第4部「怒りの日」はスリリングなレクイエム。ディエス・イレ(怒りの日)からラクリモサ(涙の日)までをたどる。その直後に突如としてベートーヴェンの「合唱幻想曲」が始まる。それは神の厳しさからの解放のように聴こえる。第5部「ドナ・ノビス・パーチェム(我らに平和を与えたまえ)」は、冒頭、児童合唱が勢いよく「aはアップルのa、ブックマーク、ブルーレイ、ビーイング、バイアウト、コピー、クラッシュ、キャッシュフロー、キャンセル(以下略)」と言葉遊びを始める。次いでボーイソプラノ独唱となり、大合唱が続く。最後は明確な終止形をとらない。
全体を通して、明るい笑いとポジティブな気分が横溢している。元気がでる曲だ。実演で聴くと、圧倒的な音響に飲みこまれるだろう。
全5部からなり、演奏時間は約100分。演奏時間といい、上記の編成といい、とてつもない大曲だ。歌詞は、旧約聖書、新約聖書、ミサ典礼文、「子どもの魔法の角笛」、その他12人の詩人・哲学者・作家などの言葉による。NMLに収められたブックレットには歌詞が載っていない。音を聴いただけでは、50%の理解にとどまるのが残念だ。今回の公演(ケント・ナガノ指揮N響その他)は中止になったが、公演用に対訳が用意されていたなら、その対訳が日の目を見ないのは惜しい。
どんな音楽か。第1部「ヒカリアレ/光あれ」(原題はカタカナ部分がラテン語、漢字とひらがな部分がドイツ語)を例にとると、冒頭は無音の中から、打楽器の擦音がかすかに聴こえ、やがて子どもが「創世記」を語り始める。楽器の数が増し、合唱が加わり、「光あれ!」のピークを形成する。荘厳な瞬間だ。その直後に(こういっては何だが)場違いなワルツがバリトン独唱で始まる。さらにバリトン独唱は抒情的な歌曲を歌う。もう何が何だがわからない。最後は合唱の穏やかなコラールで終わる。
第1部の演奏時間は約18分。普通なら約18分は長いが、それを長いと感じない。次から次へと音楽が変わるからだろう。その音楽は、多様式というよりも、多様式という「様式」をこえた「何でもあり」の音楽のように感じる。
以下、簡略に記すと、第2部「洪水」はカオスの世界。最後に心安らぐバリトン独唱となる。第3部「愛」は男女の世俗的な愛憎劇。第4部「怒りの日」はスリリングなレクイエム。ディエス・イレ(怒りの日)からラクリモサ(涙の日)までをたどる。その直後に突如としてベートーヴェンの「合唱幻想曲」が始まる。それは神の厳しさからの解放のように聴こえる。第5部「ドナ・ノビス・パーチェム(我らに平和を与えたまえ)」は、冒頭、児童合唱が勢いよく「aはアップルのa、ブックマーク、ブルーレイ、ビーイング、バイアウト、コピー、クラッシュ、キャッシュフロー、キャンセル(以下略)」と言葉遊びを始める。次いでボーイソプラノ独唱となり、大合唱が続く。最後は明確な終止形をとらない。
全体を通して、明るい笑いとポジティブな気分が横溢している。元気がでる曲だ。実演で聴くと、圧倒的な音響に飲みこまれるだろう。