Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

「芸術家たちの住むところ」展

2022年08月02日 | 美術
 用事があって、さいたま新都心に行った。ついでなので、うらわ美術館に行ってみた。JR浦和駅から徒歩10分くらい。ロイヤルパインズホテル浦和という大型ホテルの3階にあった。同美術館を訪れるのは初めてだ。

 同美術館では「芸術家たちの住むところ」展が開催中だ。浦和には多くの画家が住んだらしい。関東大震災の後、東京から多くの画家が浦和に移ったためだ。当時は「鎌倉文士に浦和絵描き」という言葉があったそうだ。

 本展はそれらの画家30人余りの作品を展示したもの。前期と後期に分かれている。いま開かれているのは後期だ。2章構成になっている。第1章は「描かれた土地の記憶」。のどかな田園地帯だった浦和の自然やレトロな洋館建築など、いまでは懐かしい風景を描いた作品群だ。浦和には縁がないわたしにも楽しめる内容だった。

 第2章は「戦後:それぞれの道」。画家たちが戦後、それぞれの作風を追求した作品群だ。そのなかでわたしは瑛九(えい・きゅう)という画家に注目した。実感としては、瑛九を「発見」したといったほうがいい。

 瑛九は1911年に宮崎県に生まれた。1951年に浦和市仲町に移り、翌年、浦和市本太に引っ越した。1960年に同地で亡くなった。わたしは、うろ覚えだが、瑛九という名前を知っていた。作品も目にしたことがある。だが、まとめて見るのは初めてだ。本展では第1章に5点、第2章に8点が展示されている。それらの作品を通して、瑛九とはどんな画家か、初めてつかめたような気がした。

 第1章の5点には、瑛九自身がフォト・デッサンと名付けた技法による作品が3点ふくまれている。写真を基盤とした白黒の影絵のような作品だ。「かえろ、かえろ」、「散歩」そして「あそび」と名付けられたそれらの作品は、ノスタルジックで詩情豊かな、レースのように繊細な作品だ。

 第2章の8点の中では「田園」という油彩画に衝撃を受けた。眩しいほどの夕日に照らされた田園風景だ。夕日が眩しいので、風景はほとんど見えない。風景画というよりも、太陽の圧倒的な力の表現のように思える。人間はもちろん、自然をも超えた、ある絶対的な力の啓示のような作品だ。本作品は瑛九が亡くなる前年に描かれた。そのためなのかどうなのか、ろうそくが燃え尽きる前のような異常な輝きが表れている。画像を紹介したいのだが、残念ながら本展のHPには画像が掲載されていない。上記のフォト・デッサンも同様だ。チラシ↑に使われている作品は瑛九の「作品」(部分)だが、この作品から「田園」は想像できないだろう。
(2022.7.15.うらわ美術館)
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