Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ノット/東響

2024年07月21日 | 音楽
 ノット指揮東響の定期演奏会。曲目はラヴェルの「クープランの墓」とブルックナーの交響曲第7番(ノヴァーク版)。追悼音楽プロだ。

 「クープランの墓」は木管楽器、とくにオーボエが活躍する曲だが、今回の演奏は生真面目過ぎた。きっちり演奏しているが、もっと洒落っ気がないと、この曲の味が出ない。もどかしく感じるうちに演奏が終わった。難しいものだ。他の木管楽器では、クラリネットが時々アレッと思うほどの表情を付けた。

 ブルックナーの交響曲第7番は、力感あふれる大演奏だった。第1楽章はレガートのかかった、たっぷりとうたう歌が、連綿と続く。その流れに乗ってゆけば良いのだが、そのうちに、間がないことに気付いた。総休止の途切れがなく、レガートでうたい継がれていく。それはそれで魅力的だが、総休止はどこにいったのかと‥。それが気になっているうちにコーダに入った。ティンパニのロール打ちが始まる。それがだんだん大きくなり、他の楽器を圧するほどに大きくなった。いくらなんでもやり過ぎではないだろうか。もちろんティンパニ奏者の独断ではなく、ノットの指示だろう。どんな意図か。

 第2楽章も連綿と続く歌に変わりはない。一つひとつの歌が、たっぷりと、かつしっかりと、うたわれていく。クライマックスの音の爆発は目が覚めるようだ。その後のワーグナー・チューバとホルンの暗い音色も申し分ない。それにしても、わたしは第1楽章と第2楽章の音を追ううちに少し疲れた。

 第3楽章はその疲れを追い払うような演奏だった。ダイナミックでホールを揺るがすように鳴る演奏だ。ノットの本領はやはりこの辺にあるのかと‥。第4楽章も同様だ。リズムの切れは第3楽章に顕著だが、一方、第4楽章には彫りの深さがある。そしてともに快適なテンポで進み、オーケストラ全体がよく鳴る。音色は明るく、混濁しない。スタミナも十分だ。一流指揮者と一流オーケストラの演奏だ。

 終演後は大喝采だった。だがわたしは昔のような深々としたブルックナーはもう聴けなくなったなと、一抹の疎外感に浸った。ノットと東響の演奏はすばらしい。マイクが何本も立っていたので、録音していたのかもしれない。CDで聴いたら、感動するだろう。でも、実演で聴いたわたしは、その演奏のすべての音が、あまりにも明確な意志で統御されていることに違和感をもった。ブルックナーの音楽はこうだったっけ‥と。

 なお個別の奏者では、フルート首席の竹山愛の、輪郭のはっきりした演奏が目立った。とくに長大なソロのある曲ではないが、時々ハッとするようなフレーズを聴かせた。
(2024.7.20.サントリーホール)

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