Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

下野竜也/N響

2025年02月23日 | 音楽
 N響の定期演奏会Cプロ。指揮は下野竜也で、プログラムはスッペとオッフェンバックを中心にしたもの。スッペ(1819‐1895)とオッフェンバック(1819‐1880)は同い年だ。ワーグナー(1813‐1883)とヴェルディ(1813‐1901)が同い年なのと似ている。

 1曲目はスッペの「軽騎兵」序曲。冒頭の金管楽器がさすがに良い音だ。スッペにしては上等すぎるといったら語弊があるが、オペレッタの場末の雰囲気(これも語弊があるが、けっして悪い意味でいっているのではない。言い直せば、世俗的な雰囲気)とは多少ニュアンスの違う音だ。それにしても、「軽騎兵」序曲は明暗のコントラストが濃やかな名曲だ。N響の演奏はその点でも見事だった。

 2曲目はサン・サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番。ヴァイオリン独奏は三浦文彰。三浦文彰の演奏は何度か聴いたことがあるが、当日の演奏は今まで聴いた中でもっとも感心した演奏だ。まず音が見事だ。冒頭の太い音から、第2楽章の最後の、ほとんど聴こえるか聴こえないかというくらいの細い音まで、NHKホールの大空間によく響いた。また、音楽の形を崩さない演奏スタイルが、サン・サーンスのこの曲にふさわしい。というのは、この曲は過度に甘く演奏されることがあるからだ。三浦文彰の演奏はそのような自己満足的な演奏とは一線を画した。

 アンコールが演奏された。ヴュータンの「アメリカの想い出「ヤンキー・ドゥードゥル」」だ。華麗なテクニックを開放して、満場の喝さいを浴びた。

 休憩をはさんで、3曲目はスッペの「詩人と農夫」序曲。チェロの首席奏者・辻本玲の弾くソロが情感豊かな名演だ。曲自体は、わたしは「軽騎兵」のほうがよくできていると思うが、でも実演を聴くと、やはり聴き応えがある。

 4曲目はオッフェンバック(ロザンタール編曲)の「パリの喜び」。オッフェンバックのオペレッタの音楽を指揮者のロザンタールがバレエ音楽用に編曲した。序曲と23曲の小品からなるが、当日は序曲と16曲が演奏された。

 例のカンカン踊りを含むこの曲で一挙に盛り上がった、といいたいところだが、どうなのだろう。オッフェンバックのオペレッタの味は、ロザンタールが編曲したこのバレエ音楽で、多少損なわれたのではないだろうか。わたしが経験したオッフェンバックのオペレッタは、2001年12月にパリのシャトレ座で観た「美しきエレーヌ」だ。ミンコフスキ指揮のルーヴル宮音楽隊がピットに入り、活気のある演奏を繰り広げた。パリっ子たちは大喜びだ。わたしも興奮して、寒い夜のパリをホテルまで(地下鉄に乗らずに)歩いて帰った。
(2025.2.22.NHKホール)

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