Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

アラン・ギルバート/都響

2016年07月26日 | 音楽
 アラン・ギルバートの都響への3度目の客演.。今回は、遂にというべきか、プログラムにマーラーが組まれた。過去2度の客演で手応えをつかんだので、さらにもう一歩踏み込んだ関係に進もうとする意欲の表れではないだろうか。

 1曲目はモーツアルトの交響曲第25番(「小ト短調」)。ノン・ヴィブラートでフレーズを短く切る演奏(いわゆるピリオド奏法に近い)。わたしは、思えばとくに根拠はなかったのだが、普通のモダンなスタイルの演奏を予期していたので、意外な感じがした。激しいアタックで、気合が入った演奏。

 2曲目はマーラーの交響曲第5番。昨今、演奏頻度が過剰なくらいに多い曲だが、アラン・ギルバートのこの演奏は並みの演奏とは一味も二味も違った。音が軋み、突き刺さり、炸裂する。初演当時のこの曲の衝撃力を髣髴とさせる演奏だ。先日、別の指揮者と別のオーケストラで同じくマーラーの第6番を聴いたが、あのときの明るく、スマートで、ストレスがない演奏とは対極の演奏。

 第2楽章が怒涛のような演奏だった。荒波が岩にぶち当たり、砕け散る。恐ろしいほどの激しさ。一方、第4楽章は、甘美というよりも、孤独に浸る演奏。ハープがじつに音楽性豊かな演奏をしているので、だれだろうと思ったら、吉野直子さんだった。

 全般的に音の陰影、ニュアンスがいつもと違う感じがした。アラン・ギルバートの個性かと思ったが、帰路、プログラムを読むと「今回の演奏では、アラン・ギルバートとニューヨーク・フィルのボウイングを使用します。」と書いてあった。そうか、そのせいか‥と納得した。

 マーラー演奏では長い伝統を誇る都響だが、ベルティーニ、そしてインバルと続いた指揮者の後を継ぐ人材が現れたと思った(そう思った人は、わたしだけではないだろうと感じる)。

 終演後は盛大な拍手とブラヴォー。ソロ・カーテンコールで舞台に登場したアラン・ギルバートは、トランペットの高橋敦とホルンの西條貴人を連れていた。2人とも大活躍だったので、満場の拍手を受けさせたわけだが、指揮者とオーケストラとの仲間意識が感じられ、会場に温かい空気が流れた。都響のホームページによると、同じプログラムが演奏された前日には、ヴァイオリンの矢部達哉と四方恭子を連れて出てきたそうだ。

 アランと都響とはコミュニケーションが良好にとれているようだ。
(2016.7.25.サントリーホール)

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