平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

アパートの鍵貸します

2006年12月10日 | 洋画
 ビリー・ワイルダーの「アパートの鍵貸します」小道具の使い方が心憎い。

★割れた手鏡
 これで部長の恋人がフラン(シャーリー・マクレーン)であることがわかる。
 彼女はバクスター(ジャック・レモン)のアパートで部長と喧嘩しこれを投げたのだ。
★ラケット
 これをパスタの湯切りに使っていたバクスター。
 ラケットにこびりついていたパスタが、フランとの楽しかった生活を思い出させる仕掛けになっている。
 ウディ・アレンが「アニー・ホール」でこの作品へのオマージュとして同じ様な使い方をしていた。
★カードゲーム
 これもバクスターとフランを繋ぐ小道具。
 カードゲームで負けたフラン。
 ラストでもう一度、カードゲームをやろうと言う。
★帽子
 管理職になって大得意のバクスターの象徴。
 この粋な帽子をかぶってフランを口説こうとも思っている。
 フランが失われ、管理職も捨てたバクスターは会社を去る時、この帽子を通りすがりの男にかぶせていく。
★エレベーター
 バクスターとエレベーターガールであるフランが会話する場所。
 同時に10階の平社員バクスターが27階の管理職に昇格するという象徴でもあった。
★ガスオーブン
 マッチで火をつける形のもの。
 フランはそれを知らずに火をつけなかったため、ガス漏れが発生。
 また自殺かとバクスターは部屋に飛び込む。
★拳銃とシャンパン
 同じく自殺を思わせるアイテム。
 パン!という音を聞き、フランはバクスターの部屋に飛び込む。
 すべてを失って彼が自殺したのではないかと思うのだ。
 だが、実はシャンパンの栓を切っただけだった。

★鍵
 何と言ってもこれに尽きる。
 (この作品、未見の方にはネタバレになります)
 ある課長にアパートを貸したバクスターは、鍵を間違えられる。
 情事が終われば、鍵をマットの下に置いていくのがルールなのだが、課長は間違えて管理職用のトイレの鍵を置いてしまったのだ。
 それによってバクスターは自分の部屋に入れないことに。

 前半、このエピソードをふっておいて、
 部屋の鍵とトイレの鍵、このふたつの鍵は思わぬドラマを作り出す。

 フランとの情事のため部屋を貸せと言う部長。
 フランを愛し、部長の不実を知っているバクスターは、それを断る。
 「拒めば降格だぞ」と脅迫する部長。
 バクスターは仕方なくポケットから鍵を出して放り投げる。
 だが、その鍵は、管理職用のトイレの鍵だった。
 バクスターは部長の要請を断ると共に、やっと勝ち取った管理職の椅子も捨てたのだ。
 これを象徴的に描いた。
 実に見事!!

コメント
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