平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

ダーティハリー

2006年12月13日 | 洋画
 主人公に課せられるカセ。
 これがいくつもあること、これがドラマを面白くする。
 カセを主人公がどう切り抜けるかがドラマを面白くする。

 名作「ダーティハリー」のハリー・キャラハン刑事に課せられているカセはこうである。
 ★犯人
 ★法律(上司)
 ★新米の相棒

 刑事ドラマであるから犯人が主人公のカセになるのは当たり前だが、このスコルピオという犯人、なかなか頭がいい。
 「ヤツが再び狂い出すのを待ちます」と言って、スコルピオを尾行するハリー。
 スコルピオはハリーを捜査から外すために、ハリーに暴行を受けたとマスコミにアピールする。本当は金を払ってある黒人に殴らせたものなのだが。

 法律もまたハリーの邪魔をする。
 スコルピオの居場所を突きとめるハリー。
 令状をとっていては逃げられてしまう。
 誘拐されている少女の命が危ない。
 そのため令状なしでスコルピオの家に踏み込んだために証拠がすべて無効に。
 勝てない裁判はやらない。
 スコルピオは釈放になる。
 喰ってかかるハリーに上司は言う。「それが法律だ」
 ハリーに暴行されたとマスコミに訴えた時も上司は「監視をやめろ」とハリーに言う。
 その時、ハリーが皮肉をこめて返したせりふがいい。
 「ヤツが喜ぶ」

 ハリーは皮肉屋だ。
 強姦しようとしている男を射殺したハリー。
 「そいつが本当に強姦しているかどうかわからないだろう」と言う上司にこう返す。
 「ナイフ持ってハダカの女追いかけ回している女が募金活動していると思いますか?」

 相棒もカセになる。
 今回はチコという新米刑事。
 「新米を調教している暇はない」と相棒にするのを突っぱねるハリー。
 チコが大学出のエリート刑事だとわかると「出世できるぜ。死ななければな」と皮肉を言う。
 結果として、チコは有能な刑事でハリーの足を引っ張ることはなかったのだが、スコルピオに撃たれて、刑事を辞めることになってしまう。
 ハリーがチコを遠ざけたのは、自分といっしょにいると常に危険にさらされるからだということが、この後のハリーの対応で観客に伝わるのだが、部下の命を気遣って捜査しなければならないハリーには大きなカセになる。

 余談だが、チコの後釜でちょっと出て来る刑事が味がある。
 彼はベテランらしく、ハリーのやり方をよく知っている。
 スタジアムでスコルピオを追いつめ、誘拐された少女の居場所を吐かせるために拷問しようとするハリーにこう言う。
 「手を貸そうか?」
 この一言で彼もまた法律や上司の思惑など関係なく捜査する刑事であることがわかる。

 この様に幾重ものカセが課せられた「ダーティハリー」。
 この作品が発表された当時としては、その刑事像・犯人像においてかなり斬新であったろう。
 法律・上司がカセになるということも新鮮であっただろう。

コメント
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