日本ホラー大賞を受賞作。
「選考委員への挑戦か?」と物議を醸して受賞した作品らしいが、出版社のその煽り方がいい。
物語はこうだ。
故郷の祭りで串刺しにされて売られている「姉」に魅了されたぼくは大人になってお金を稼げるようになると「姉」を買い、それを天井から吊して楽しむ。
「姉」の設定はこうだ。
串刺しにされた人間だが、なぜか生きている。
じたばたともがき、嬌声をあげて生きる。
しかし生存は1ヶ月~3ヶ月。
その間、所有者のどんな責め苦にも耐えられる。
天井から吊されたその姿は浮世絵の無惨絵の様。
また、「姉」には姉を作り出す影の組織がある。
組織は作り出した「姉」を祭りで見せ、客に購入させる。
しかし、最近はなかなか人が調達できず、「姉」を作ることができないらしい。
(主人公はそれは「姉」の値段をつり上げるための口実だと思っているが)
通販で買う場合は「串一本下さい」と言って買う。
こうした「姉」の設定自体がグロテスクで怖ろしいが、もっと怖いのは「姉」に魅了された人間の妄執だ。
主人公は「姉」と暮らし、痛ぶる時だけ人生の至福の時を感じる。
「長年夢想し続けてきたあらゆる演出を施しながら、ぼくは姉の唸り声、罵声、悲鳴、嬌声に酔いしれ、威嚇し、怯え、吠える姉の姿を楽しんだ。ぼくは姉に仕え、姉を賛美し、姉に奉仕し続けた。生活のために家を空けている間、鮨を握っている間も頭の中は姉のことしかなかった」
この描写の怖ろしいこと!
「唸り声」「罵声」「悲鳴」「嬌声」、「威嚇し」「怯え」「吠える」と言った同類の言葉を重ねることで恐怖が増す。
そして1ヶ月経って「姉」が死んでしまうと、どうしようもない喪失感にとらわれる。
「姉」の遺体を抱きしめてぼくは思う。
「思っていたよりずっと柔らかかった。もろくてはかない感じだった。愛しかった。愛しくて、切なくて、哀れで、痛ましかった。声をあげて泣いた。号泣した。姉を失った悲しみと、姉を幸せにしてあげることができた悦びにまみれて泣いた。
血にまみれて泣いた」
主人公の人生はすべて「姉」のためにある。
「姉」を手に入れるために借金をし、身を破滅させていく。
「1ヶ月ほどの快楽のために費やすにはあまりにも大きな額を要求されるのだ」
これは人間の妄執の恐怖。
人間の囚われは破滅を招く。
そして「姉」を「麻薬」など人間の様々な欲望に当てはめてみれば、この作品の描きたかったことが見えてくる。
もっとも、この作者は本当に「姉」そのものを描きたかったのかもしれないが。
「選考委員への挑戦か?」と物議を醸して受賞した作品らしいが、出版社のその煽り方がいい。
物語はこうだ。
故郷の祭りで串刺しにされて売られている「姉」に魅了されたぼくは大人になってお金を稼げるようになると「姉」を買い、それを天井から吊して楽しむ。
「姉」の設定はこうだ。
串刺しにされた人間だが、なぜか生きている。
じたばたともがき、嬌声をあげて生きる。
しかし生存は1ヶ月~3ヶ月。
その間、所有者のどんな責め苦にも耐えられる。
天井から吊されたその姿は浮世絵の無惨絵の様。
また、「姉」には姉を作り出す影の組織がある。
組織は作り出した「姉」を祭りで見せ、客に購入させる。
しかし、最近はなかなか人が調達できず、「姉」を作ることができないらしい。
(主人公はそれは「姉」の値段をつり上げるための口実だと思っているが)
通販で買う場合は「串一本下さい」と言って買う。
こうした「姉」の設定自体がグロテスクで怖ろしいが、もっと怖いのは「姉」に魅了された人間の妄執だ。
主人公は「姉」と暮らし、痛ぶる時だけ人生の至福の時を感じる。
「長年夢想し続けてきたあらゆる演出を施しながら、ぼくは姉の唸り声、罵声、悲鳴、嬌声に酔いしれ、威嚇し、怯え、吠える姉の姿を楽しんだ。ぼくは姉に仕え、姉を賛美し、姉に奉仕し続けた。生活のために家を空けている間、鮨を握っている間も頭の中は姉のことしかなかった」
この描写の怖ろしいこと!
「唸り声」「罵声」「悲鳴」「嬌声」、「威嚇し」「怯え」「吠える」と言った同類の言葉を重ねることで恐怖が増す。
そして1ヶ月経って「姉」が死んでしまうと、どうしようもない喪失感にとらわれる。
「姉」の遺体を抱きしめてぼくは思う。
「思っていたよりずっと柔らかかった。もろくてはかない感じだった。愛しかった。愛しくて、切なくて、哀れで、痛ましかった。声をあげて泣いた。号泣した。姉を失った悲しみと、姉を幸せにしてあげることができた悦びにまみれて泣いた。
血にまみれて泣いた」
主人公の人生はすべて「姉」のためにある。
「姉」を手に入れるために借金をし、身を破滅させていく。
「1ヶ月ほどの快楽のために費やすにはあまりにも大きな額を要求されるのだ」
これは人間の妄執の恐怖。
人間の囚われは破滅を招く。
そして「姉」を「麻薬」など人間の様々な欲望に当てはめてみれば、この作品の描きたかったことが見えてくる。
もっとも、この作者は本当に「姉」そのものを描きたかったのかもしれないが。