平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

バットマン リターンズ

2006年12月15日 | 洋画
 ティム・バートンの作品はおもちゃ箱をひっくり返した様な楽しさに溢れている。
 バットマンも例外ではない。
 ペンギン男率いるサーカス党、おもちゃの様なギミック満載のバットモービルなど、子供の空想がそのまま映像になった様な感じ。
 しかし、描かれているものは非常にグロテスクだ。
 色とりどりの映像の中に描かれるグロテスク、これがティム・バートンの魅力でもある。

 さて、この作品で描かれるグロテスクは登場する怪人たちにある。

 ペンギン男はその醜悪な姿ゆえ(檻の中に入れられた赤ん坊の彼は歩いてきた猫を捕まえると食べてしまう)、赤ん坊の時に両親に下水に捨てられた。
 下水で育った彼は人間に深い恨みを持つと共に、人間でありたいとも思っている。自分が誰であるかを知りたいと思っている。
 下水から出て来た彼は、両親が誰かを確認し自分の名前がオズワルドであることを知る。
 次に市長になろうと思う。
 人々に尊敬されたい、受け入れられたいという理由もあるが、一方で市長になって自分を忌み嫌った人間に復讐をしたいとも思っている。
 その歪み具合。
 後半、バットマンにその歪んだ心を暴露された彼はこう言ってペンギンを使ったテロに走る。
 こう言って演説会場では傘に仕込んだ機関銃を乱射する。
「俺は人間じゃない。血も涙もないケダモノだ」
「人間的な感情など、捨ててしまった」

 キャットウーマンは復讐によって生まれた怪人。
 秘書だった彼女(セリーナ)は社長であるマックスに殺された。
 その恨みによって誕生した彼女は今まで抑圧していたものがなくなったのか、やりたい放題をする。
 鞭で人を打ちのめし、セクシー路線をひた走る。
 今までは通販の電話や母親の電話にイライラする様な、ある意味どこにでもいる市民だった彼女がこう言い放つ。
「自称、普通の人間は退屈よ」
「あなたの仮面を剥がしたいわ」(この場合、仮面とは市民としてのモラルを言う)
 そしてマックスに復讐を果たす時は、バットマンにこう言う。
「彼や私たちに法律は関係ないわ」
 キャットウーマンは抑圧されたものがなくなった時、人はどう変わるかというモデルとして興味深い。

 そしてもうひとりの怪人・バットマン。
 ティム・バートンは「二重人格」ということで、バットマンを描こうとしていたらしいが、これはあまり成功していない。
 ブールス・ウェインはなぜ仮面をつけるのか?
     〃    はなぜバットマンになるのか?
 正義のためとだけでは説明のつかない何かがある。     
 後半、セリーナを愛したブルースは、バッドマンの仮面を脱ぎ捨てキャットウーマンであるセリーナにも仮面を脱ぐように言う。
 ブルース・ウェインとしてセリーヌに求愛しているのはわかるが、彼がなぜバットマンになったのかの説明はなされていない。
 この辺が描けていれば、もっと深いドラマとなっていただろう。

★追記
 こんなせりふのやりとりも気が利いている。
 キャットウーマンを見て、警備員はこう言う。
「助けてくれ。俺は週給300ドルの身だ」
 するとキャットウーマン。
「消えな。給料泥棒」
 週給300ドルでもしっかり働けということの様だ。

コメント
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