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平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

ジョン・レノン 「イマジン」

2006年12月24日 | 監督・俳優・歌手・芸人
 ジョン・レノンのドキュメンタリー映画「イマジン」。

 冒頭はビートルズへの熱狂から始まる。
 観客たちは熱狂を通り越したトランス状態、気絶する女性多数。
 当時、ビートルズがどの様な存在であったかがうかがえる。
 物議をかもしたというジョンの発言「キリスト教は滅びるだろう。僕らはキリストより人気がある」もなるほどと思う。
 ビートルズはその様な存在だったから、その反動もすごかった。
 先程のキリスト教発言では、熱心なクリスチャンからレコードを割る抗議デモ、日本の公演では若者を堕落させるとして右翼が騒いだという。
 ジョンたちは自分たちに対する熱狂と反動の両方を引き受けた。
 普通の人間では耐えられないプレッシャー。
 それが出来るからスーパースターなのであるが、やはりジョンも弱音を吐いて「HELP」を作った。また「ドラッグ」に走った。

 そんなジョン・レノンが強くなったのは、オノ・ヨーコと出会ってからだ。
 世間の批判もヨーコといっしょなら耐えられる。
 ヨーコの思想に触発されて、ジョンは次々とメッセージを世界に向けて発信する。
 平和のベッドイン。
 ふたりのヌード写真。
 反ベトナム戦争。
 戦争ではなく愛。
 その過激なメッセージを伝える手段に当然、良識派からは非難を浴びる。(作品中ではベッドインしているふたりに保守派の漫画家が意見をしに来る。その議論がふたりへの世間の批判を象徴している)
 ジョンはヨーコとふたりでそれを引き受けて、メッセージを発し続けた。
 それでも世間はふたりをどんどん孤立させていき、ポール・マッカトニーまでが批判にまわる。
 ジョンは最後にはすべてを否定し、ポールには「君のしたことはイエスタデーだけだ」と言い、信じられるのは「自分とヨーコ」だけだと歌にする。

 時代と常に戦ってきたジョン。
 そのエネルギーは計り知れない。
 普通なら負けてしまう。(この辺は実際にベッドインの映像を見ると皮膚感覚で伝わってくる)
 それでも彼はヨーコと共に立ち向かった。
 彼は常に誰かが必要で、誰かに愛されていないと駄目な人間だった(「STAND BY ME」)が、傍らにヨーコがいて、彼女がいたから戦えた。
 「僕は反抗的な人間だが、誰からも愛されたい人間だ」とジョンは語っている。
 その辺の弱さもジョンの魅力だ。

 そしてジョンが発し続けたメッセージ。
 「愛」。
 彼は自分のこと、ヨーコのこと、息子のことなどプライベートなことをよく歌にしたが、そこで表現されているのも「愛」。
 彼の先妻がインタビューで語った様に「彼は素直に愛を表現した」。
 ベッドインもその表現のひとつ。
 彼の身体の中に「愛」が溢れていたから、すべての歌や行動に「愛」が表現されている。
 ここには表現者と作品の関係が如実に表れている。

 そんな愛に溢れたジョンが時代と格闘して搾り出した言葉が「イマジン」。
 だからこの曲には、大きな力がある。

 それにしてもジョンが格闘し続けた時代とは、どの様な時代なのだろう?
 「愛」という今では巷に溢れているメッセージを発し続けたジョンが非難された時代とはどの様なものだったのだろう?(キリストも愛を説いて迫害されたことを考えると興味深い)
 そして今の時代、私たちはどの様な言葉で時代と戦っていかなくてはならないのだろう?

コメント (5)
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