カラオケ店で、栞(二階堂ふみ)は、再婚しない小春(満島ひかり)について紗千(田中裕子)と次のような話をする。
「いつまでも思ってても仕方ないのにね。結構 バカだと思う。ずっと1人でいるの?おかしいよね、後ろ向き過ぎでしょ。新しい人好きになればいいのに」
すると紗千。
「そうは言ってもそうはいかないのよ。そうやって生きてる人もいるし、そこにすがってしか生きられない人もいる。たった一日や一度の幸せを大事に抱えて一生を生きる人もいるの。それはそんなに悪い生き方じゃないわ」
この紗千の言葉は栞にとってショックであっただろう。
なぜなら、紗千は小春のことを理解し、肯定しているのだから。
栞にしてみれば、母親・紗千に「そうだよね。バカだよね」といっしょに言ってもらいたかったはず。
その心の奥底には
<母親・紗千を小春に奪われたくない>
<母親・紗千は小春のことを理解しているのに、自分のことはまったく理解していない。絵の上手い自慢の娘だという上っ面の幻想しか見ていない>
という思いがある。
だから栞は、ピザなどを大量に注文し、自分の本音をぶちまけた。
「私、ずっとダメなの。小学校の時からずっとダメなの。何もできないくせに自己評価ばかり高いから自意識ばかり強いからいじめられるの」
「お母さんは、私のダメなとこなんて見たくないんだから」
そして信(小栗旬)が家にやって来て、紗千と小春の関係が元に戻りそうになった時は「へえ、私、ここでも居場所なくなるんだ」と感じ、電車で信の顔を見て、次のように思う。
「へえ、こういうふうに笑う人がいるんだ。こういうふうに笑う人が世の中にはいるんだ。幸せな人なんだろうな。私みたいな思いしたことないんだろうな。こういう人達がうちに来たら、私、どこに行けばいいんだろう。もう行くとこないのにな。腹立つなって」
そして……。
痴漢のえん罪。
信の轢死。
栞は<ダメで醜い自分><罪深い自分><孤独な自分>を母親に知って欲しかったのだ。
そんな栞を紗千は叩き、抱きしめた。
人は<幻想>を見ている間は幸福ですよね。
娘は、絵が上手い自慢の娘だと思っていればいい。
しかし、むき出しの<現実>が現れると……。
娘は、ダメで醜くて、罪深く、孤独で、誰かの助けを求めてもがいている存在になる。
紗千はそんな娘を叩いて叱りはしたが、味方になり、守る覚悟を決めたようだ。
それが母親ということか。
坂元裕二脚本は、人の心の奥底をえぐり、グイグイ掘り下げていく。
そして、掘り下げていった先に本当の理解がある。
上っ面の表面的な関係では決して得られない共感がある。
そう思いたいし、信じたい……。
最後に二階堂ふみさん、見事な演技でした。
「いつまでも思ってても仕方ないのにね。結構 バカだと思う。ずっと1人でいるの?おかしいよね、後ろ向き過ぎでしょ。新しい人好きになればいいのに」
すると紗千。
「そうは言ってもそうはいかないのよ。そうやって生きてる人もいるし、そこにすがってしか生きられない人もいる。たった一日や一度の幸せを大事に抱えて一生を生きる人もいるの。それはそんなに悪い生き方じゃないわ」
この紗千の言葉は栞にとってショックであっただろう。
なぜなら、紗千は小春のことを理解し、肯定しているのだから。
栞にしてみれば、母親・紗千に「そうだよね。バカだよね」といっしょに言ってもらいたかったはず。
その心の奥底には
<母親・紗千を小春に奪われたくない>
<母親・紗千は小春のことを理解しているのに、自分のことはまったく理解していない。絵の上手い自慢の娘だという上っ面の幻想しか見ていない>
という思いがある。
だから栞は、ピザなどを大量に注文し、自分の本音をぶちまけた。
「私、ずっとダメなの。小学校の時からずっとダメなの。何もできないくせに自己評価ばかり高いから自意識ばかり強いからいじめられるの」
「お母さんは、私のダメなとこなんて見たくないんだから」
そして信(小栗旬)が家にやって来て、紗千と小春の関係が元に戻りそうになった時は「へえ、私、ここでも居場所なくなるんだ」と感じ、電車で信の顔を見て、次のように思う。
「へえ、こういうふうに笑う人がいるんだ。こういうふうに笑う人が世の中にはいるんだ。幸せな人なんだろうな。私みたいな思いしたことないんだろうな。こういう人達がうちに来たら、私、どこに行けばいいんだろう。もう行くとこないのにな。腹立つなって」
そして……。
痴漢のえん罪。
信の轢死。
栞は<ダメで醜い自分><罪深い自分><孤独な自分>を母親に知って欲しかったのだ。
そんな栞を紗千は叩き、抱きしめた。
人は<幻想>を見ている間は幸福ですよね。
娘は、絵が上手い自慢の娘だと思っていればいい。
しかし、むき出しの<現実>が現れると……。
娘は、ダメで醜くて、罪深く、孤独で、誰かの助けを求めてもがいている存在になる。
紗千はそんな娘を叩いて叱りはしたが、味方になり、守る覚悟を決めたようだ。
それが母親ということか。
坂元裕二脚本は、人の心の奥底をえぐり、グイグイ掘り下げていく。
そして、掘り下げていった先に本当の理解がある。
上っ面の表面的な関係では決して得られない共感がある。
そう思いたいし、信じたい……。
最後に二階堂ふみさん、見事な演技でした。