格差階級社会をなくそう

平和な人権が尊重される社会を目指し、マスゴミに替わって不正、腐敗した社会を追求したい。

 読売社説 民主「西松」報告批判は的外れだ

2009-06-11 18:48:06 | 植草一秀氏の『知られざる真実』

読売社説 民主「西松」報告批判は的外れだ
 西松建設違法献金事件に関連して民主党が設置した有識者会議「政治資金問題をめぐる政治・検察・報道のあり方に関する第三者委員会」(座長・飯尾潤政策研究大学院大教授)が6月10日、報告書を岡田克也幹事長に提出した。


報告者は、

①事件の概要と法律解釈上の問題点、

②検察当局の対応の問題点、

③メディア報道の問題点、

④民主党の対応の問題点、

について詳細な分析を示したうえで、

⑤関係者からのヒアリング等の内容、

をも開示する、極めて有用性の高いものである。


短期日にこのような詳細な分析を行い、分かりやすい形で報告書をまとめられた関係者の尽力に敬意を表したい。


報告書は今回摘発された事例について、綿密な法律解釈を施しており、今後の公判において争点になると考えられる問題について、適切な判断の視点を提示している。


報告書が提起した多くの論点のなかから、重要と考えられる五つの点を以下に提示したい。


①罪刑法定主義との関連


今回の事案では、政治資金規正法違反を理由として刑罰権が発動されている。罪刑法定主義の大原則に立つなら、犯罪構成要件としての法令の解釈・罰則適用基準について事前に明確な定めが示されることが不可欠である。


ところが、報告書によれば、
「同法の解釈をめぐって、総務省は刑罰の問題であるとして具体的な解釈指針を示さず、他方で法務省は法律の所管官庁でないとして解釈基準を示そうとせず、両省の間で責任の押し付け合いともいえる状況が生じている」のである。


すなわち、会計責任者があらかじめどのように記載すればよいかが不明確な状況が放置されていたなかで、後から記載が法律に違反するとして処罰されるというようなことが生じているのである。


公職選挙法の「虚偽記載」の事例でも同様の問題が生じているが、法令全般、とりわけ刑罰を伴う法令においては、事前に犯罪構成要件としての法令の解釈と罰則適用基準が厳密に明示されていることが不可欠である。罪刑法定主義は「法の支配」を実現するうえで不可欠な事項である。しかし、今回の問題では、この点が曖昧極まりなく、事後的にも総務省、法務省当局が明確な見解を表明できない事態が生じている。


マスメディアは小沢一郎民主党前代表の「説明責任」を追及するが、小沢氏の説明が困難であることの最大の理由が、法令解釈の不透明性にある。この点については後述する。


②検察当局の行動に関する問題


 報告書は政治資金規正法の関連条文について詳細な分析を施したうえで、今回の検察当局の行動を厳しく批判している。詳細は報告書の本文を閲覧いただくしかないが、政治資金規正法の考え方を踏まえたうえで、違法行為について詳細な論点を提示している。


そのうえで、検察捜査が及ぼす影響を踏まえたうえで、今回の検察当局の行動の不当性を厳しく指摘している。世論は自民党議員に捜査が波及していないことに対する疑義を提示してきたが、この点についても、検察当局の行動の不当性が厳しく指摘されている。


③民主党の行動に対する建設的な提言


小沢前代表を含めて、民主党幹部が検察による摘発が行なわれた当初に、検察当局の行動に厳しい批判を示したことについて、報告書は一定の積極的評価を示した。報告書は次の指摘を示した。


「民主的正当性を持たない検察の不当・違法な捜査権限の行使による政治介入が行われ得ること、それが、とりわけ時の政府に都合の良い形で行使される傾向があることは、第3 章の3-1.で述べたとおりであり、そのような権限行使が行われたた疑いがあるのであれば、民主主義を担う政党として、憲法及び法令によって認められた手段を駆使して、検察の不当な政治介入に対して毅然たる姿勢を示すことも重要である」


適正な指摘である。この点に関連して言えば、民主党の岡田克也氏や前原誠司氏が示した事件発生当初の対応は、極めて不適切であった。検察の不当な政治介入が存在し得る可能性を考慮せず、両氏をはじめとする一部の民主党議員が検察捜査に対して毅然とした姿勢を結束して示さなかったことが、のちに民主党代表辞任という事態にまで問題を波及させてしまった大きな原因になったと考えられる。


岡田氏は報告書の提出を受けた際のインタビューでも、「党としての検察批判は避けたい」との発言を繰り返したが、不適切な対応を繰り返している。岡田氏は報告書を熟読して、相手が検察であろうとも毅然とした姿勢を示さねばならない局面があることを正しく理解するべきである。


報告書は検察に対する毅然とした対応に積極的評価を与えているが、同時に、いざ問題が発生した場合に、政党が問題を真摯(しんし)に受け止めることの重要性、およびその影響を政党として最小限に食い止めるための具体的な対応の方法についても、きめ細かい提言を示している。


小沢代表の説明が不足した大きな理由に、上述した「法令解釈の曖昧さ」の問題があり、この点に対する理解は不可欠であるが、それでも、報告書が指摘するような問題が存在したことを否定できない。


民主党は今回の報告書を詳細に検討したうえで、報告書が示す建設的な提言を可能な限り生かしてゆくべきだ。報告書が建設的な視点で、具体的提言を示したことは高く評価される。


④NHK報道の重大な問題の指摘


報告書は3月25日午前零時のNHK報道の悪質さを厳しく糾弾した。この報道については、私も放送を聞いた瞬間にその悪質性に気付き、ブログ記事を執筆したが、この問題について、適切な対応を求める重要性が高い。


⑤メディア報道全般の問題


報告書はNHK報道にとどまらず、メディア報道全般についての問題点を厳しく糾弾している。過大・歪曲報道、検察リーク報道、などの重要な問題を的確に指摘している。各報道機関は報告書が示した的確な指摘に謙虚に耳を傾けて、報道姿勢の適正化に取り組む必要がある。


しかし、現在のマスメディア報道の問題は、大半のマスメディアが権力に迎合し、報道機関としての本来の役割を放棄してしまっていることに原因があると考えられ、短期にその改善を見込める状況にない。政権交代後に、報道の実態について本格的検証を行ったうえで、抜本的対応を施すことが不可欠である。


このような質の高い報告書が提出されたにもかかわらず、一部の報道機関が的外れな論評を掲載した。その典型的事例が読売新聞社説である。読売社説は以下の記述を示した。


「民主「西松」報告 検察・報道批判は的はずれだ」
「的はずれもいいところだ。小沢氏に持たれた疑惑の核心部分はもっと別のところにある。


 秘書が西松建設幹部と相談し、ダミーの政治団体からの献金額や割り振り先を決めていたとして、検察当局は悪質な献金元隠しと認定した。小沢氏はこれまで、「献金の出所は知る術(すべ)もないし、詮索(せんさく)することはない」「秘書に任せていた」などと繰り返してきた。


 だが、同様に献金を受けた他の与野党議員と比べても巨額だ。出所や趣旨を吟味するのは、政治家として当然の責任だろう。


 小沢氏は今なお、疑惑に正面から答えようとしていない。代表辞任で、国民が求める説明責任を免れることはできない。」


 メディアは、小沢氏が献金の出所を知らなかったと説明したことに対して、鬼の首を取ったかのように執拗に攻撃を続けてきた。攻撃する部分が極めて少ないために、一般的に疑問と感じられる点を針小棒大に取り上げて「説明責任」の言葉を繰り返している。


 それほど「説明責任」を重視するなら、「検察の説明責任」、「西川善文日本郵政社長の説明責任」も同様に追及するべきだろう。マスメディアの小沢氏批判は「あげ足取り」の域を出ない。


 小沢氏の説明が不足する要因のひとつに、先述した「犯罪構成要件としての法令の解釈・罰則適用基準」の曖昧さの問題がある。


報告書は、政治資金規正法が収支報告書に「寄付行為者」の記載を義務付けており、「資金拠出者」の記載を求めていないと指摘する。小沢前代表の秘書が「新政治問題研究会」「未来産業研究会」という二つの政治団体からの献金を「新政治問題研究会」「未来産業研究会」からの献金と記載した行為は虚偽記載にあたらないと指摘する。


この記載が「虚偽記載」に該当するには、「新政治問題研究会」「未来産業研究会」という二つの政治団体が、資金の拠出者から政治団体に金銭や利益を供与するための単なる「トンネル」のような実体のない団体であることが立証される必要があるが、報告書は、
「西松建設が2009 年5 月15 日に公表した内部調査委員会による調査報告書に記載された政治団体の実態によれば、二つの政治団体を単なる「トンネル」のような実体のない団体とは認め難い」
と指摘する。


この指摘が正しければ、小沢氏の秘書が仮に「資金拠出者」が西松建設であると認識していたとしても、「虚偽記載」で罪を問われることはないということになる。


ところが、検察当局の行動をみると、検察当局は小沢氏の秘書が、資金拠出者が西松建設であることを認識していたかどうかを問題とし、西松建設であると認識していた場合には、政治資金規正法が認めていない企業から政治家個人の資金管理団体への献金を隠ぺいするために「工作」をしたことになるとして摘発しようとしているように見える。


ただ、この点についても報告書は、現在の政治資金規正法は企業から政党支部への企業献金を容認しており、小沢氏サイドは西松建設からの献金を政党支部で受け入れることが可能だったのであり、問題に重大性はないと結論している。


話がやや込み入ったが、問題の根源は、政治資金規正法の運用における、「犯罪構成要件としての法令の解釈・罰則適用基準」の曖昧さにある。この点が明確でなければ、小沢氏はうっかり発言を示すことができない。


読売新聞の社説は検察の説明にそのまま乗ったものであるが、検察の評価基準が客観的で適正な評価基準である保証はどこにもない。現行法規では、企業から政党支部への献金が認められており、現に自民党議員の多数が政党支部で受け入れた企業献金を個人の資金管理団体に移し替える「迂回献金」を実行している。


この意味では、小沢氏の資金管理団体が西松建設からの企業献金を受け入れていたとしても、「悪質な献金元隠し」などの批判はあたらない。政治献金を西松建設から政党支部への献金に修正報告すれば済むようなことである。


読売社説は検察の主張をそのままなぞらえただけのものである。問題の根源に、「罪刑法定主義」の大原則からはずれる、法令解釈や罰則適用基準の不明確さがあることを忘れてならない。


いずれにせよ、西松建設の献金をめぐる小沢前代表秘書の逮捕、起訴問題は、本来、犯罪に該当するようなものでなく、仮に犯罪性が指摘されたとしても、形式的で軽微な問題であることが改めて明確にされたと判断できる。


このような軽微な問題が、政治的な背景を伴って政治情勢に重大な影響をあたえる事案として取り扱われたことの問題がはるかに重要だ。


報告書は多くの重要な問題を提起しており、この報告書を最大限に活用することが求められる。


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前ブッシュ政権の内幕?

2009-06-11 18:25:32 | オルタナティブ通信

前ブッシュ政権の内幕?



「オバマ新大統領の対日戦略」、

http://alternativereport1.seesaa.net/article/112645727.html


「オバマ大統領を操るミサイル屋」、

http://alternativereport1.seesaa.net/article/114965674.html


「日本国土で展開されている、オバマ大統領のアフガニスタン戦争」、

http://alternativereport1.seesaa.net/article/115979998.html


「アフガニスタンを巡るアメリカと中国の戦争」、

http://alternativereport1.seesaa.net/article/114638868.html


「オバマ大統領のボスの思考パターン」、

http://alternativereport1.seesaa.net/article/113139580.html


「オバマ大統領の『世界戦略』」、

http://alternativereport1.seesaa.net/article/114232993.html


「オバマ大統領の政策ブレーンの『本当の仕事』」、

http://alternativereport1.seesaa.net/article/111306183.html


「オバマ大統領の『戦闘開始』命令」、参照。


http://alternativereport1.seesaa.net/article/113522030.html







書籍短評 : ジョン・B・テイラー 「テロマネーを封鎖せよ」 日経BP社



 著者は、前ブッシュ政権で財務省次官・国際担当者として対外経済・財政政策を仕切った。本書は、ブッシュ時代の一種の回想録として興味深い。

本書には、2001年に起こった、アルゼンチン金融危機の本質が「それとなく」記載されている。アルゼンチン政府が対外債務を返済不能=デフォルトした場合には、アルゼンチンに資金を貸し付けていた米国を始めとした先進国の民間銀行が「貸付金の焦げ付き」によって連鎖倒産する危機に立たされ、先進各国はアルゼンチンを救うためでなく、自国の民間銀行を救済するためにアルゼンチン政府を救済せざるを得なくなっていた。謂わば、サラ金の被害者が「裁判所に駆け込み、破産手続きを開始してしまわないように」、さらに資金を貸し付け、「生かさず殺さず、末永く、利息を支払わせ、搾り取り続ける」策が講じられた。

先進各国とアルゼンチン政府による、このアルゼンチン国民「未来永劫、搾り取り政策」が策定された際、その中心に居たのがイスラエル銀行・元頭取ヤコブ・フレンケルであった。経済危機・戦争が「どの国の金融機関を中心として創出・演出されるか」を、著者は「それとなく」匂わせている(注1)。

 また「金融自由化」=全ての金融投機に監視・拘束は不要との考えの下に、父ブッシュ時代の国務長官として、第一次イラク戦争を開始したジョージ・シュルツが、IMF廃止論を強硬に主張している様も描き出されている。こうした無規制論が、現在のサブプライム問題=金融恐慌を生み出す。このIMFを「どのように有効活用するか、廃止するか」の議論は、ブッシュ時代から続けられており、昨今のSDR(IMF特別引出権)に中国人民元の役割を大きく含ませる事によって、中国を国際金融のコントローラー・支配者の地位に就任させようとする動きも、その継続延長上に生まれて来る。

オバマ政権と、ブッシュ時代の「通底部分」が、ここには見えている。

 先のアルゼンチンに対する「未来永劫、搾り取り政策」は、オバマ政権の政策ブレーンとなるジョセフ・ナイ等々のハーバード大学ケネディ行政大学院による「ジュビリー2000」政策となって、「定型化」される。A・A・LA(アジア・アフリカ・ラテンアメリカ)諸国に対し、一部の債務免除と同時に新規貸付けを行う事によって、「軍需を含む」新しい需要が創出され、先進国の不況脱出に「使える」と言う政策である。これは「借金の免除」と言う人道主義的側面を持っているため、「市民運動の取り込み」が可能であるとして、チョムスキーを始めとした学者、ロックバンドU2のボノ等々といった「芸能人の動員」が可能となった。

ブッシュ政権の政策担当者として、イラク戦争・アフガニスタン戦争の「人殺しのための資金繰り」を担当した著者は、チョムスキーと、U2ボノの「有効な活動を、賞賛して止まない」。

911テロ、それに続く、アフガニスタン戦争、イラク戦争の「批判・非難に、馳せ参じた」目立ちたがり屋の売名知識人・ジャーナリスト・芸能人、売名市民運動家・運動屋の中に、「テロと戦争を起こした張本人であるブッシュの、子飼い扇動屋」、そしてブッシュ=ロックフェラーに当時、対立していたロスチャイルド=現オバマ政権の民主党派が多数、居た事を、本書は暗に示している。

911テロ批判派の中に、現オバマ政権への批判を「決して口に出さない、飼い犬ポチ」が多数、存在している事が、それを証明している。


*注1・・・「日本、迎撃ミサイル実験『成功』の深層」、参照。

http://alternativereport1.seesaa.net/article/73617435.html



          リンク・サイト 「アナザー・オルタ通信」

          http://anotheralt.seesaa.net/?1244539810

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国会に出頭すべき竹中平蔵氏と郵政民営化の嘘

2009-06-11 14:09:59 | 植草一秀氏の『知られざる真実』

国会に出頭すべき竹中平蔵氏と郵政民営化の嘘
郵政民営化関連法を起案した責任者は竹中平蔵氏である。


「かんぽの宿」疑惑に象徴される日本郵政の「郵政私物化」疑惑の根本原因に竹中氏の根本的に間違った認識がある。


竹中氏が著書「構造改革の真実」に記述した「民営化」の理解が根本的に間違っており、このことが「かんぽの宿」を氷山の一角とする、日本郵政の不適切な事業運営を招く元凶になったと考えられる。


竹中氏は「民営化」について、次のように記述する。


「辞書によると、民営化とは、「民間の経営に任せること」とある。文字通り郵政民営化とは、郵政の経営を民間に任せることであり、政府はそれが可能なように、また効率的に行われるように枠組みを作ることである。これで、西川氏に、経営のすべて、民営化のすべてが委ねられることになった。」
(「構造改革の真実」239ページ)


 「これで」とあるのは、日本郵政初代CEOへの西川氏就任が内定したことを示している。この言葉は、2005年11月11日に西川氏の初代CEO就任内定を受けて西川氏と竹中氏が記者会見を行なった時点での竹中氏の判断を示している。


 細かいことだがCEOは日本郵政株式会社法には登場しない用語であり、竹中氏の興奮ぶりが伝わる記述である。


 日本郵政は2007年10月1日に株式会社形態に企業形態が移行した。竹中氏は、株式会社に経営形態が変わることをもって「民営化」が実現したと理解し、「民営化」した以上、日本郵政の経営のすべてが西川氏に委ねられることになったと「勘違い」したのである。


 この間違った判断から、「民営化した日本郵政においては、すべてを西川氏の思いのままにして構わない」、「民営化した日本郵政の経営に総務大臣が介入することは根本的な誤りだ」とする、「根本的に誤った」考え方が導かれたのだろう。


 日本郵政は日本政府が株式を100%保有する「完全国有会社」であって、「民間会社」ではない。竹中氏が起案した日本郵政株式会社法は総務大臣に極めて強い権限を付与し、総務大臣は日本郵政に対して監督および検査の権限を有し、取締役等選任については、「総務大臣が認可しなければ効力を生じない」との定めが置かれている。


日本は法治国家である。竹中氏は法律制定の責任者であるのだから、法の遵守(じゅんしゅ)を基本に据えて発言するべきである。


竹中平蔵氏など、西川善文社長続投をごり押ししようとする人々は、西川氏更迭(こうてつ)を「改革の後退」と唱えるが、郵政民営化に関連する不祥事を引き起こした責任者の責任を問うことが、どうして「改革の後退」になるのか。


「郵政民営化」を一点の曇りなく推進するうえでは、不祥事の存在を白日の下に晒(さら)し、責任ある当事者の責任を適正に追及しようとする鳩山総務相の行動に対して、竹中氏などが感謝と敬意を表明するのが当然であって、鳩山総務相を「根本的に誤っている」と非難するのは、筋違いも甚(はなは)だしい。


日本郵政株式会社法は総務大臣に日本郵政の取締役等選任の認可権を付与しており、総務大臣の認可がなければ取締役選任の効力が生じない。麻生首相は「担当大臣である鳩山総務相がしかるべく判断される」と、鳩山総務相の判断に委ねることを明言した。


一連の意志決定プロセスは法律に則っており、2005年9月の郵政民営化選挙で示された民意を尊重するなら、この選挙を受けて成立した「日本郵政株式会社法」の条文を忠実に遵守(じゅんしゅ)することが求められ、麻生政権は粛々と西川社長更迭を決定すればよいのだ。


総務相の判断に横やりを入れて、日本郵政人事に竹中平蔵氏や中川秀直氏が介入することについては、日本郵政株式会社法のどこをひっくり返しても、その根拠を見出すことができない。日本郵政株式会社法の条文に従って行動する鳩山総務相を批判する人々の行動が、民意に反していることは明らかだ。


所管大臣が法律の規定に則って認可権を行使することに異を唱え、「認可権を行使するなら総務大臣を辞任すべき」などの発言を示す人物が、首相が総裁を務める政権与党の一員として国会議員でいることが驚異である。


大臣も内閣も、法律の規定に沿って粛々と判断し、決定すればよいだけで、そもそも総務大臣と、監督下にある特殊会社社長とを対等に扱い、同レベルでの対立の図式に見立てて説明することが異常である。


竹中平蔵氏、中川秀直氏、菅義偉(すがよしひで)氏などが西川氏更迭に異常なまでの抵抗を示すことが、とても不自然である。「これらの人々は、西川社長が更迭されたあとで巨大な不祥事が発覚することを心底恐れている」との憶測が生まれるのは、この不自然さに原因がある。




テレビ各局は、誰から指令があったのか知らないが、竹中平蔵氏へのインタビューを多用し、竹中氏はねじ曲がった論拠を示して、西川氏続投論を懸命に主張している。


竹中氏は単なる民間人ではない。郵政民営化関連法を成立させた首謀者である。国会は、竹中平蔵氏に対して何度も参考人としての出頭を求めている。その要請を「多忙」を理由に拒否し続けているのが竹中平蔵氏である。


竹中氏は、竹中氏が大好きな「イコールフィッティング」の討論の場には、決して姿を現さない。テレビに出演する際は、必ず応援団の同席を求める。竹中氏は姑息に逃げ回るのをやめて、国会で堂々と意見を陳述するべきである。与野党の議員が竹中氏の出頭を、首を長くして待っている。


竹中氏が逃げ続けるなら、国会は竹中平蔵氏の証人喚問を求めるべきだ。民法各局も、国会への出頭を拒み続ける人物へのインタビューを自粛するべきである。


郵政民営化が財政投融資の巨大な構造にメスを入れるために必要不可欠であったとの意見が散見されるが、これも違う。この点について私は、直接、小泉純一郎氏と意見を闘わせたことがある。


詳細については稿を改めるが、郵貯や簡保、年金で集められた資金が、政府系金融機関、事業実施機関、独立行政法人などに投融資される仕組みが従来の「財政投融資」だった。


私は「天下り」を中心とする官僚利権の本丸は、財政投融資の「出口」である特殊法人、独立行政法人側にあり、こちらの改革を実行しなければ意味がないと主張し続けた。


これに対し、小泉氏は、「入り口」の郵貯、簡保が問題であるとして、この民営化だけを主張した。意見対立は平行線で終わった。郵政民営化が実現したが、「出口」の天下り等の問題には、まったく手がつけられなかった。


詳細は拙著『知られざる真実-勾留地にて-』、「週刊金曜日2005年9月30日号」所収の拙稿『小泉・竹中の二枚舌を斬る』等をご参照賜りたい。


2005年9月の総選挙に際し、私は民主党幹部に、自民党の「郵政民営化」主張に対して、「天下り根絶」の旗を掲げ、「本当の改革はどちらか」との勝負を挑むべきだと提言した。


結局、小泉政権は郵政民営化を実行したが、「天下り根絶」には一切手を付けなかった。「天下り」への対応の象徴になると指摘し続けた政府系金融機関改革においても、小泉政権は「天下り」を温存する選択を示したのである。 


郵政民営化によって、これまで「官」にしか流れなかった資金が「民」に流れるようになると言われたが、そのような現実が生じているだろうか。答えは「否」である。


ゆうちょ銀行、かんぽ生命の資産内容を見る限り、運用のほぼすべてが有価証券保有で、民営化以前とほとんど変化が生じていない。事実に基づかない説明で、一般国民を誤導しようとする人がいるが、事実に基づかない説明は悪質である。


郵政民営化の実態が「郵政私物化」、「郵政米営化」であるとの指摘は正鵠(せいこく)を射(い)ている。いずれにせよ、竹中平蔵氏には国会に出頭していただき、正々堂々と国会の場で意見を陳述してもらいたい。


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