十一月十五日 秋晴、滞在。
早起、身心軽快、誰も愉快そうだ、私も愉快にならざるをえないではないか。
八時から十一時まで行乞、なぜだかいやでいやでたえがたくなって、河原に横ってお弁当を食べたり景色を観たりしても、気分がごまかせない、あちらこちらを無理に行乞して二時帰宿、一杯ひっかけた、財布に五銭、さんやに一合しかない、行こう行こう、明朝はどうでもこうでも出立しよう、絶食もよし、野宿もやむをえな . . . 本文を読む
第四一課 体育
一時、「自然に還れ、自然に還れ」という声が盛んでした。近頃の青年男女はそんなことを叫ぶ代りに直ちに実行に移して、大空の下、大地の上を、天幕テント旅行にハイキングに、登山にスキーに、競走に水泳に、ドライヴに乗馬に、積極的に自然へ向って飛び出して行きます。そして浩然の気を養っております。これは誠に結構なことであります。しかし、そういうことをするのに、時間と費用との余裕がない人も随 . . . 本文を読む
十一月十四日 晴――曇、滞在。
寒くなつた、冬が近づいたなと思う、沈欝やりどころなし、澄太君からも緑平老からも、また無相さんからも、どうしてたよりがないのだろう、覚悟して――というよりも、あきらめて――ままよ一杯、また一杯。……(山頭火が大山澄太、俳人木村緑平、念仏者木村無相との深い心の交流を持っていたことがわかります)
今日はよく辛棒ママした、七時――十一時、そしてまた十二時――二時、市内 . . . 本文を読む
第四〇課 僻み
僻みとは
こころの窪みに溜る
垢です
弱い人
偽りかざりたい人の
こころは窪む
真実は
人を落ちつかせ
こころを窪ませない
爪に爪が酬い
憎みに憎みが来るように
垢はまた垢を呼ぶ
垢にはまた
バチルス( 細菌)が
宿る
バチルスは
またこころを
むしばむ
かくて
最初は窪んだだけのこころ
ついには腐れむしばむ
腐れむしばみ初そめたこころ
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十一月十三日 晴、滞在。
晴れてありがたかった、へんろの旅には何よりもお天気がありがたい、うすら寒い。
八時――十一時行乞、いやでいやでたまらないけれど、食べて泊るほどいただくまで、――三時まで行乞、かろうじて銭三十四銭米五合、頂戴して帰る、一杯頂戴してほっとする。……
同宿同室一人ふえる、若い易者だ、なかなかのリクツヤらしい。
――銭一銭米一合残っているだけだ!
ひなたまぶしく飯ばかりの . . . 本文を読む
第三九課 入学試験に臨んで
私の知人の息子が、嘗て小学校卒業の年、中学校の入学試験に失敗し、翌年は信仰によって立派に合格した例があります。
その少年は、小学校時代は、組でも中以上の成績でしたが、随分と小心者でしたから、いざ中学校の入学試験を受けようとすると、試験場で胸がどきついたり、口が乾いたり、すっかり逆上して、何度も勉強したところを思い出せなかったり、自分の受験番号や名前さえ書き落 . . . 本文を読む
十一月十二日 よき晴れ、滞在。
八時から十一時まで行乞、銭四十七銭米八合。
高知はやっぱり四国の都会、おせったいの意味で、みかん、かし、いも……をいただくことが多い、午後は曇る、降ったら困るな、一杯ひっかける!
夜は市街を散歩する、明日の行乞場所を視察しておく、歩いても歩いても何を視ても何を視てもなぐさまない。
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第三八課 懺悔
さんげは
心象こころ上の生理作用です。
人間の体の皮膚に老廃物が溜れば
一つ一つの毛孔けあながふさがり
ついに健康に支障さわりを来すように
人間の心にも
心を活かして行く上に不必要なものがたまる。
たとえば、過去の嘆きとか悩みとか、罪悪を悔くいる気持ちとか、
それらは体の皮膚にたまる老廃物と同じく
人間の心象のはたらきに溜る老廃物です。
さんげすることは
一体の皮膚を洗 . . . 本文を読む
3月15日定例会の記録
3月15日定例会の記録
春になり少し暖かくなりましたが、護国寺の堂内はまだ風が冷たく感じられる日でした。
護国寺定例参拝会は、少し少なく7名の参加者でした。
いつものとおり、全員で般若心経、観音経、諸真言をお唱えいたしました。最後に、法界定印を結び、心静かに瞑想して参拝を終わりました。
そのあとに飯田橋に移動して懇親会となりました。
高原講元から、若 . . . 本文を読む
第三七課 お茶時ティータイム
イギリスの家庭では四時過ぎ頃、家族一同集まってお茶を飲みます。いわゆるお茶時ティータイムです。お茶は紅茶で、お茶受けにはパンの薄片うすきれにバターを塗ったもの、ビスケット、ケーキ、その時々の主婦の思い付きによります。時にはコーン・フレックスといって玉蜀黍とうきびの沢山入ったパン菓子の暖め立てのものを食べます。なかなか美味おいしいものです。
巴里へ行きます . . . 本文を読む
十一月十一日 晴、滞在。
七時――十二時、市内行乞(米四合、銭五十五銭)。
人さまざま世さまざま、同室四人、みなへんろさん、私もその一人。
身心のむなしさを感じる。
高知城観覧、その下でお弁当をひらく、虱をとる、帰宿して一杯、そして一浴、鬚を剃った、ぽかぽか――ぼうぼう。――
(「お遍路の誰もが持てる不仕合ふしあわせ、(森)白象」金剛峯寺第406世座主をつとめた森寛紹師の句です。この句は、 . . . 本文を読む
現代の日本人には『あの世』の存在への感覚が戻ってきています。
統計数理研究所『日本人の国民性調査』(2008年)では、『あの世』を“信じる」という人は1958年の平均20%から50年を経て2008年は平均38%へと倍増しており、特に20歳代では49%と半数が「信じる」としています。
あの世の存在を信じるという気持ちは「いのち」への深い愛情と惜別の念なくしては生じえません。こう考えれば日本人、特に若 . . . 本文を読む
十一月十日 晴、朝寒、行程八里、高知山西。
――よう降った、夜明けまで降りつづいたが、朝はからりと晴れわたって、星がさえざえと光っていた、――助かったと思う、幸福々々(宿もよかった、ほとんど申分なかった)。
七時出立、松原がよろしい、お弁当のおもいのもうれしかった、赤岡町まで二里半、途中行乞(功徳は銭七銭米六合)。
午後はひたすら高知へ強行した、申訳ないけれど、第二十八番、第二十九番は遥拝で . . . 本文を読む
第三六課 ハムレット
ハムレットは、叔父に父を殺され、殺した叔父に母は嫁ぐ。自分はその叔父すなわち彼の恋人の父を殺さねばならない。しかも恋人はそのために狂死する。およそ世界の悲劇を一人で背負ったような青年です。それから彼はいちいち几帳面に仇敵に、それ相応の復讐を遂げ、自分はわざと恋人の兄の刃にかかって死にます。因果応報の道具にだけこの世に生れて来たような青年です。彼が台詞の言葉で言うように . . . 本文を読む
「虚空蔵菩薩能満諸願最勝秘密陀羅尼義経
善無畏三蔵奉詔訳
そのとき、薄伽梵(世尊)、諸波羅密、平等性智三摩地にいり、定から起って即ち此の能満諸願虚空蔵菩薩最勝秘密陀羅尼義をといて曰く。(虚空蔵菩薩の御真言は:「ノウボウ アキャシャ キャラバヤ オン アリ キャマリ ボリ ソワカ」であるがこのうち)ノウボウとは帰命の義である。毘盧遮那清浄平等法界本命言なり。アキャシャとは虚空の義。十方如来の智慧体 . . . 本文を読む